俳句(2/23掲載)

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【石母田星人 選】


春の海へ色をたがえて河の水   石巻市流留/大槻洋子

【評】大量の雪解水が河口から吐き出されている。「色をたがえて」で濁った水が塊となり海面を染める姿を描く。「春の海へ」の6音の字余りが効果的で、待ち受ける立場の海の余裕と懐の深さを表している。


盤上の小さき宇宙冬うらら   松島町磯崎/佐々木清司

【評】碁を打っているのか将棋を指しているのか。盤上は知恵がちりばめられてまさに宇宙。窓外は寒気鋭い晴天。戦いの模様を暗示しているような天候だ。


鮟鱇を捌く話や長寿眉   石巻市中里/佐藤いさを

【評】名調子が聞こえそうだ。鮟鱇にとっても吊るされるのは嫌だろうが、長寿眉相手なら仕方がない。


初午や獅子に咬ませる頭の二つ   石巻市桃生町/西條弘子

小舟乗り門波に門波初弁天   石巻市新館/高橋豊

政宗の野心を孕む臥竜梅   多賀城市八幡/佐藤久嘉

籠を編む弾む会話は冬を編む   東松島市矢本/田舎里美

節分や鬼も友だちてふ絵本   石巻市中里/川下光子

冬麗庭の隅には赤き花   石巻市流留/和泉すみ子

しらじらと夜の明け染むる寒椿   石巻市丸井戸/水上孝子

名指揮者別離を惜しむ冬椿   東松島市赤井/志田正次

遅々として進まぬ車春の月   石巻市小船越/芳賀正利

鳥引くや沼の賑ひみな持ちて   石巻市広渕/鹿野勝幸

寒星の輝く空や夢のなか   石巻市駅前北通り/津田調作

寒暁に軟膏一塗り舫解く   石巻市湊/斎田流雲

虎落笛鳶と烏の争えり   石巻市小船越/堀込光子

チョコボール冬の落日見てをりぬ   石巻市蛇田/石の森市朗

薄氷に先陣競ふランドセル   石巻市向陽町/成田恵津美

忘れじの海に立つ影おぼろ月   石巻市門脇/佐々木一夫

この辺が家の跡地か冬の蝶   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

シリウスや瞬く天体冴渡る   石巻市駅前北通り/小野正雄

鍬のサビ春に備えて磨き石   石巻市桃生町/佐藤俊幸

冬うららサッカー少年声高し   石巻市元倉/小山英智

浜風を緑に染めて若布ゆで   東松島市あおい/大江和子

一念の願いを秘めて梅蕾む   石巻市中里/須藤清雄


川柳(2/23掲載)

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【水戸一志 選】


武器を持ち平和合意はすぐ曇り   石巻市向陽町/佐藤功

【評】イスラエルのガザ攻撃はやっと休戦にこぎ着けた。しかし、パレスチナ側からの人質解放が済んだ後のことは分からない。ロシアのウクライナ侵攻は3年。トランプ流の停戦工作が始まったが先は読めない。まこと武器を持った手での握手は難しい。


雪国の老齢厳し雪ニュース   石巻市水押/阿部磨

球根が春はまだかと顔を出す   石巻市鹿又/遠藤錬治

フードロス最たる物の恵方巻   東松島市赤井/志田正次

ご褒美の自分ファーストバレンタイン   石巻市広渕/きよし

アクセント違っただけで波が立ち   東松島市大塚/石垣久子

つつじ野に思わぬ事実教えられ   仙台市太白区/金野正郎

ミサイルで2カ月おきの揚げ花火   石巻市渡波/阿部芳明


川柳教室、3月18日 参加者を募集

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 三陸河北新報社は3月18日、「石巻かほく」日曜川柳欄の選者、水戸一志氏(利府町)による川柳教室を石巻市千石町の石巻河北ビル1階かほくホールで開く。受講生を募集する。

 教室は同月18日火曜の午後1時~2時半、川柳宮城野社(仙台市)の編集同人、県川柳連盟理事の水戸氏が講師を務める。新型コロナウイルス禍があり、川柳教室は2019年9月以来の開催となる。

 定員は30人。先着順。参加費は資料代400円で、当日支払う。申し込みは、はがきに住所、氏名(柳号を使用している人は併記)、連絡先を明記し、〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集局「川柳教室」係へ。連絡先は0225(96)0321。


短歌(2/16掲載)

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【斉藤 梢 選】


歳ひとつ積みて重たく想えども餅食む元気と明日があるさ   石巻市駅前北通り/津田調作

【評】年頭の一首。上の句の「重たく想えども」には、94歳の心情が滲む。歳を重ねるという表現ではなく「積みて」とすることによって、老いを消極的に受け入れているのではない姿勢が見える。四句の「餅食む元気」の生き生きとした具体と「明日があるさ」の近未来を見つめる眼差しの力強さと明るさ。老いの実感の「重たく」に屈しない心のバネの持ち主の津田さん。読者をも勇気づける作品だと思う。日々の暮らしを大切にして詠むことが、作者の生の証明。


愁ひなく浮かびてひかる冬雲を伴ひてゆくわれの歩みは   石巻市あゆみ野/日野信吾

【評】この時、見上げた雲の様子に何かを感じたことが、歌の生まれる起点。冬の空に浮かんでいる雲は愁いを纏(まと)わずに光っている。もし、愁いに満ちている雲であれば「伴ひてゆく」という気持ちには至らなかったのでは。空に在る星や雲や虹が、閉じていた心の扉を開いてくれることもあるので「ひかる冬雲」は友のようでもある。冬の日の雲と作者の会話を想像したい。韻律の良さも魅力の一首。


なしとげし仕事に安堵するように夕陽は茜の汗を滲ます   東松島市矢本/田舎里美

【評】「茜の汗」とした捉え方が優れている。夕空が茜色に染まっている光景を目にして、一日を働いた太陽が安堵しているように思えたのだろう。「夕陽」の「汗」を見ることができる作者の豊かな感性。


貴婦人とうクリスマスローズ買い求め敬語で花に優しく語る   石巻市渡波町/小林照子

【評】冬の貴婦人とも呼ばれる「クリスマスローズ」。その一鉢を求めて、白い花に語りかける作者。「敬語で」という一語に込められた思いこそが、優しい。


カツカツと後追いて来る若き人挨拶の声オクターブの差   石巻市南中里/中山くに子

トリムネと笑い話と大根の夕餉のメニュー夫とたのしむ   石巻市駅前北通り/工藤幸子

ため息の一つ二つと増えいるに深呼吸して立ち直りゆく   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

風花を散らす光の眩しさよ春を求めて覗く水仙   石巻市門脇/佐々木一夫

「まあいいか」魔法の言葉幾度も壁乗り越えて明日へと歩く   東松島市赤井/佐々木スヅ子

朝日浴びる北上川の川霧やしばれる今朝も<瀬々の網代木(あじろぎ)>   女川町旭が丘/阿部重夫

通院日ばかり記載のわが手帳四月コンサートの日にははなまる   東松島市矢本/菅原京子

寒空に満月ありて煌々と輝く様(さま)に命洗われる   石巻市不動町/新沼勝夫

冬晴れの霜柱立つ庭先のかすかな芽生え春まだ先に   石巻市桃生町/西條和江

ベランダで親子の雀楽しげに挨拶くれてそっと飛びたつ   石巻市西山町/藤田笑子

庭の木の繁みの中にスズメ達うまく隠れろ今夜も雪だ   東松島市矢本/畑中勝治

初詣石段のぼり息切らす足は進まず海風寒し   東松島市赤井/茄子川保弘

すべらかな肌を晒して風雪に耐へて春待つプラタナスの木   石巻市向陽町/成田恵津美

逝きし子の年数えれば六十こえ老いのわが身も九十となる   女川町浦宿浜/木村くに子


川柳(2/16掲載)

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【水戸一志 選】


球音に浮かれ花粉が踊り出す   石巻市蛇田/菅野勇

【評】野球ファンがそわそわし出すと杉花粉も踊り出す。球春と花粉症を組み合わせる意地悪さが川柳人らしい。言われてみれば、テレビニュースでは同居する。プロ12球団はキャンプイン、選抜高校野球も出場32校が決まり、組み合わせが気になる。


福は内おひとり様は鬼も内   石巻市美園/ひらやん

みな値上げおかずハリボテすべも無し   石巻市広渕/モクモクひろし

路線バス客が一人のぜいたくさ   石巻市蛇田/佐藤久子

備蓄米売りに出すなら今でしょう   石巻市向陽町/夢香

トランプに税金かけた時期もある   東松島市あおい/添田潤

トランプ似鬼の顔面豆で打つ   石巻市開北/安住和利

もう一人の自分を生かすペンネーム   石巻市あゆみ野/日野信吾


コラム: 床屋

 月に一度、同じ町内の理髪店に行きます。ご主人が同級生で何かと話が弾みます。

 ふと気づきました。あの3色の灯りは全国共通かと。いや、ひょっとしたら世界共通ではないか。確かイタリアでも見たことがあるのです。だいぶ前、イタリアを旅した時、あの灯りを目にした記憶が。

 調べてみました。

 床屋の店先にあって、くるくる回る看板。名前は「有平(アルヘイ)棒」です。明治改元とともに入ってきたヨーロッパの風習の直輸入といえる造型看板です。赤・白・青のらせん状としたこの標識の歴史は古く、昔の西洋では理髪師を兼ねた医師の看板であったもの。

 また、次のような記載があります。

 「 barber は、もともと髪の毛を切らずに beards(顎ひげ)だけを切った。 beard はラテン語の barba(顎ひげ)からきている。しかし、ひげを伸ばさないようになって、バーバーの仕事に髪の毛を切ることが加わっても、その名は変わらなかった」

 「 barber はギリシア人が異民族を呼んだ言い方。もとになったバルバロスは『意味のわからない言葉を話す人』の意味で、ギリシア人が自らをヘレネスといったのに対し、異国人を指していた。次第に侮蔑的な意味を込めて奴隷などをも意味するようになった」

 学生時代に歴史の授業で習った言葉がこのように奥の深いものであったことは驚きです。私たちは心すべきですね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)


俳句(2/9掲載)

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【石母田星人 選】


山眠る星のすだれに身を委ね   石巻市湊/斎田流雲

【評】「山眠る」は静まり返った冬山を擬人化した季語。多くは昼の景で用いられるがここは夜の様子。季語の本意とはやや外れるが、夜空にもたれ本格的に眠る山も面白い。「星のすだれ」の詩的表現に感服。


青年の眼の透き通る弓始   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】新年の神社での神事か学校行事だろう。詠むべき多くの句材がある中、弓を絞る青年の顔に注目。彼の眼が透き通った瞬間、矢が放たれたに違いない。


この冬は星との会話成り立ちて   石巻市渡波/阿部太子

【評】西に宵の金星、天頂に木星と火星。この冬は惑星たちが勢ぞろい。存在感ある惑星は雄弁なのだ。


春よ来い鳶の高舞ふ被災の地   石巻市蛇田/石の森市朗

思ひきり手足を伸ばす霜の朝   石巻市桃生町/西條弘子

四股をふむ余生か冬芽よく尖る   石巻市開北/ゆき

目に沁むや青き川面の初景色   石巻市中里/川下光子

白鳥の列乱れずに行き帰り   石巻市広渕/鹿野勝幸

初日の出名もなき山に昇りけり   石巻市小船越/芳賀正利

初日の出今年も命貰い受け   石巻市門脇/佐々木一夫

春を待つ今年も同じ農日誌   松島町磯崎/佐々木清司

寒の入り気合い込めたる味噌仕込み   東松島市赤井/志田正次

冬深し男文字のはね強し   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

0乗が1なる不思議寒卵   石巻市小船越/堀込光子

ささくれていいと赦さる冬の海   多賀城市八幡/佐藤久嘉

仏前に一番さきに七日粥   石巻市新館/高橋豊

娘らと七草とんとん女正月   石巻市渡波町/小林照子

背のびして夫のかわりの年用意   石巻市流留/大槻洋子

桃太郎孫と添寝の炬燵かな   石巻市元倉/小山英智

湯婆やほんわりぬくい夜中二時   石巻市流留/和泉すみ子

雪積るみんな隠れてのっぺらぼう   石巻市駅前北通り/津田調作

葦の陰鴨の憩える汽水凪   東松島市矢本/田舎里美

土ゆすって発芽まだかと冬うらら   石巻市桃生町/佐藤俊幸

年新た歳に抗う気になりて   東松島市矢本/菅原京子

霜柱ザクザクザクと仁王立ち   石巻市桃生町/西條和江


川柳(2/9掲載)

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【水戸一志 選】


雪ふわり聞くはしんみり冬演歌   石巻市西山町/藤田笑子

【評】今年が昭和100年に当たるからだろうか。BSテレビを中心に、昭和演歌を引っ張り出した歌謡番組が急増した印象だ。懐かしい都はるみ、森進一。何故か演歌の歌詞にも寒い北国が多い。「やっぱりいいね」。急激な時代変化が言わせるのか。


ねえ熊さん人食わぬなら同居しよ   松島町高城/岡田とみ子

麦踏みのお手伝いする白鳥さん   石巻市新館/高橋豊

中居君、真相一言、君のため   石巻市水押/小山信吾

閉じこもりお金に羽の光熱費   石巻市水押/阿部磨

老いは外 豆をぶんまき喝入れる   石巻市須江/阿母礼

反省が見えてこないよ自民党   石巻市向陽町/佐藤功

心身に日ごと貼りたい保護シール   石巻市蛇田/鈴木醉蝶


短歌教室、3月5日 受講生を募集

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 三陸河北新報社は3月5日、「石巻かほく」日曜短歌欄の選者、斉藤梢氏(仙台市)による短歌教室を石巻市千石町の石巻河北ビル1階河北ホールで開く。受講生を募集する。

 教室は3月5日水曜の午後1時、歌誌「コスモス」選者、現代歌人協会会員の斉藤氏が講師を務める。新型コロナウイルス禍による中断があり、2019年9月以来の開催となる。24年度最優秀賞の贈呈もある。

 定員30人。先着順。参加費は資料代400円で、当日支払う。はがきに住所、氏名(ペンネームを使用している人は併記)、連絡先を明記して申し込む。2月21日の消印有効。〒986-0827石巻市千石町4の42、三陸河北新報社編集局「短歌教室」係へ。

 連絡先は0225(96)0321。


短歌(2/2掲載)

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【斉藤 梢 選】


見ぬふりの掃除の手抜き冬の陽がここもここもと嬉々と指差す   東松島市赤井/佐々木スヅ子

【評】冬の暮らしを詠む一首。「見ぬふり」をしているけれど、冬の陽が部屋に差し込むと、見えてしまうものがある。「掃除の手抜き」の具体が、とても正直。寒い時期は、いろいろなことが面倒になったりもするので、この歌を読んでそうそうと頷く人も多いのでは。「冬の陽が」「指差す」という捉え方がいい。少し意地悪なようにも思われる「指差す」だけれど「嬉々と」の表現で、陽射しの明るさがクローズアップされて、汚れや埃に気づきつつも、作者は暖かさに包まれているのかもしれないと想像できて、楽しくもある。


生きている事の喜び賀状書く歳月は友を減らしゆけども   石巻市あゆみ野/日野信吾

【評】年賀状を書きつつも、生きていればこその事と実感する作者。届けることができて、受け取ることができるという生の実感。下の句で表わしている現実があるからこその、上の句の「喜び」の深さと、慎みを含む「喜び」。この時の気持ちに真に添う言葉として選んだのが「減らし」だろう。疎遠になった友のこと、亡くなってしまった友のことをも思いつつ書く賀状。


新しき年を喜ぶ子らの顔見れば嬉しも涙浮かぶほど   石巻市駅前北通り/津田調作

【評】この一首を読んだ人の心に浸透してゆく「涙浮かぶほど」という感慨。「子らの顔見れば」に、新年を迎えた作者のあたたかい眼差しを見る。「嬉しも」という純朴な感情表現に胸があつくなる。


正月飾り華やぐ茶の間にかの波を知る柱、障子鎮もりてをり   石巻市開北/ゆき

【評】作者もまた「かの波」を忘れていないことを伝えている「かの波を知る」。「華やぐ」と「鎮もる」の言葉が、東日本大震災発生からの年月と今を語る。


監督が選手に飛ばすげき受けてたすきリレーが記録を作る   石巻市水押/佐藤洋子

新しき年の面舵(おもかじ)師のことば上手に描こうと決して思うな   石巻市湊東/三條順子

生きているだけで幸せ我が身体もてあましつついとおしくもあり   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

気が付けば古い葉書となりにけり不足を買いに行くも楽しや   石巻市二子/北條孝子

畑にて本年最後の野菜摘み帰りに低く頭を下げる   東松島市矢本/奥田和衛

海鳥のV字編隊飛んで行く朝日に白い体光らせ   東松島市矢本/畑中勝治

境内の子等のカウント大声で新年祝う里の氏神   東松島市赤井/茄子川保弘

ひたすらに歩いた走った生きてきたつまずきながら我が人生を   石巻市流留/和泉すみ子

電車の音夜更けの静けさ朝が来る変わらぬ一日(ひとひ)笑顔で過ごそう   石巻市西山町/藤田笑子

散歩道小さき祠に足止めて子らの安寧祈りまた歩く   女川町浦宿浜/阿部光栄

にぎやかな時はすぐ果て静かなり再びしまうチョコミントアイス   石巻市流留/大槻洋子

間合とり鴨たち止まる吾(あ)もとまるにっこりゆずりて引き返す道   東松島市矢本/田舎里美

「すみませんチクリとします」看護師さんやさしい言葉に安らぎ覚ゆ   石巻市蛇田/菅野勇

初春の天空飛ぶや鳥達の姿まぶしく心高ぶる   石巻市不動町/新沼勝夫