構図の切り取り方に工夫を
今年も良い作品が拮抗した。入賞・入選の決め手となったのは、全体を通じて、構図の切り取り方に新鮮さがあるかどうかだった。模倣から始まる部分はあるかもしれないが、今までの上位入賞作品と似たような写真ではおのずと評価が下がる。創意工夫や驚きを感じさせる、ダイナミックな作品に期待したい。
暮らし部門では、土地に根付いた人物となりわいを、絶妙なタイミングで捉えた作品が光った。入賞作品はいずれも、上手な写真という次元を超え、その土地で働くとはどういうことか、撮影者が何に共鳴してシャッターを押しているかが伝わってくる作品だった。
復興部門は作品の題材が年々変化している。震災後しばらくは、立ち上がり前を向く人の姿が多く、この2〜3年は何を撮るべきか迷いが表れた作品が目立った。今年は「復興途上にあることを忘れないで」というメッセージ性の強い写真が多かった。福島をはじめ取り残された場面をどう撮るか、風景部門も含めた今後の課題になるだろう。
審査員を務めて今年で4年目だが、年々応募者のレベルは上がっている。
多くの写真から、その場の情景や雰囲気が伝わってきた。撮影地を何度も訪れ、写り込む自然や人物を理解しようとする姿勢がうかがえた。
写す範囲を調整することで、さらに良い仕上がりになりそうな作品があった。同じ場所で撮影するにしても、望遠レンズを使って重要な要素を強調したり、余計な部分を取り除いたりすれば、入賞・入選できたかもしれない。
新設の「東北のスポーツ」は応募が少なかった。常に動きがあり、特に苦労した部門だっただろう。選手らの表情などをくみ取れるかどうかも焦点だった。
「 震災からの復興」部門の作品を見て、被災地の整備が進む一方、地域の身近な場所に心の傷が残っていると実感させられた。
応募者は風景だけでなく、東北を象徴する暮らしぶりにも目を向けるようになっている。上達のためには、さまざまな分野で力をつけることが大事だ。
静寂
審査員の依頼を受けてから、審査員作品としてこれまで、宮城県(鳴子峡紅葉、夏の鳳鳴四十八滝)、秋田県(初夏の湿原と鳥海山)と出させていただきました。
今回は、福島県檜原湖の朝焼けの写真を出させていただきます。
ここは年間を通して多くのカメラマンが訪れる裏磐梯檜原湖。磐梯山の全景をバックに檜原湖が写せるベストポイントです。 この日は天気に恵まれ、夜中から星の撮影をしておりました。朝焼けで空が焼け始める頃から周りには朝靄が立ち込めバックの磐梯山にかかってきました。刻々と変化する朝靄の幻想的な雰囲気を出したいと思い、朝靄の流れを見ながらシャッターを切っています。
この作品は、
手前に倒れている草紅葉にたくさんの霜がついて真っ白になった様子がとても綺麗に感じ、広角レンズを使い朝靄の磐梯山と合わせて撮影したものです。
夜中からの星空の撮影で身体はとても寒く冷え切っていましたが、日の出前のピーンと張り詰めたすがすがしい空気の中、この風景にとても感動して撮影をしました。
いつも自然は様々な表情を見せてくれます。
写真を通じて、この素晴らしい風景をこれからも皆さんにお伝えしたいと思います。
撮影地 福島県耶麻郡北塩原村
金子美智子