総評・部門講評/第71回(2024年)
総評
全体的に楽しんで作品を書いた人が多かった印象を受けた。70~80歳代の方は円熟して書を楽しむ境地に入っていた。若い人は線に力があった。
各部門の上位賞は筆の運び、墨の使い方といった技術がしっかりしていた。漢字は完成度が高かった。修練が必要なかなは、若い時から続けて到達した道のりを感じさせた。墨象は明るい作品が多かった。近代詩文や少字、一行書の現代書は、紙に向かって筆を運ぶのを楽しんでいた。篆(てん)刻(こく)はオーソドックスな作品が多かった一方、刻字は個性的な作品が目立った。
応募出品数は第70回の節目だった昨年より少し減ったが、総点数が1000点を超えてよかった。作品を評価される公募展は上達の張り合いにもなる。人口の多い団塊の世代や、若い人に書に親しんでもらう機会を提供しながら、書を残していきたい。
審査委員長 後藤大峰
第1部 漢字
楷書、行書、草書、隷書と多様な書体の作品が見られた。会友の作品の質が高かった。文字構成、線質、面配置など錬磨され、詩情豊かで立体感のある作品が多かった。若手の出品も見られ、飛躍が楽しみだ。
審査員 渋谷青龍
第2部かな
出品点数は一般、会友ともに若干減ったが、全体的に質は上がっている。筆運びがしっかりして充実した作品が多く、文字の大小や表現など変化に富んでいた。初出品者の労作が見られたのもうれしい。
審査員 森 草苑
第3部 墨象
線を大切にした作品が多かった。余白の美しさと墨の黒の輝き、線に躍動感のある作品が上位入賞に輝いた。多様化した現代を生きる若い世代に、心に映し出された思いをエネルギッシュに表現してほしい。
審査員 太田蓮紅
第4部 近代詩文
濃墨、淡墨の特質を生かした快作が見られ、完成度が上がっていた。一方で誤字が若干見られ、十分注意してほしい。技術は必要だが、書くときの精神のありようが大切で、魂を揺さぶる作品を期待する。
審査員 高野博行
第5部 少字
迫力ある作品群に圧倒された。思いがドンと伝わるのが少字の醍(だい)醐(ご)味(み)で、個々のスタイルを楽しんでほしい。取り組みやすさも魅力で、若い人に期待する。書の歴史を学び格調ある作品に仕上げてほしい。
審査員 佐々木藤恵
第6部 篆刻・刻字
文字の造形と解釈を審査した。河北賞は印面の構成、線の切れ味ともに群を抜いて質が高かった。会友秀逸賞は金文の妙を凝縮した作品だった。全体として、不断の努力に裏打ちされた力作ぞろいだった。
審査員 中塚 仁
第7部 一行書
思いを込めて挑んだ大作にあふれ、気迫と圧倒的な線質に敬意を表したい。一般は勢いと意欲に満ちた作品が多く、会友は自分の世界観を発展させ、充実した作品が多かった。今後も力作を期待する。
審査員 鈴木智翠