vol.03
今年4月にスタートした、職場での健康づくり応援プロジェクト「健康みやぎサポーターズ」(河北新報社主催)。その一環として11月12日に「健康経営推進意見交換会」を開催し、有識者による提言や各団体・企業の取り組みなどの情報交換を行いました。意見交換会で健康施策の動向について話した健康経営研究の第一人者古井祐司氏に、取り組みの意義や進め方などについて話を伺いました。
東京大学未来ビジョン研究センター
データヘルス研究ユニット特任教授
内閣府経済財政諮問会議専門員
自治医科大学客員教授
健康経営が今注目されているのには二つ理由があります。一つは労働人口の高齢化で、従業員の健康を気遣う必要性がより高くなったこと。ここ40年ほどでサラリーマンの平均年齢は7歳上がり、病気になるリスクが約2倍になっています。二つめは企業に付加価値が求められていること。そのためには発想力・創造性が豊かな従業員が不可欠ですし、そういう従業員のたくさんいる職場は、企業力がアップし組織として強くなる。つまり、健康経営は従業員の健康だけが目的ではなく、健康を通じて企業が持続的に成長し、従業員がいきいき働けるようになるのが目的なのです。また、これは研究している中で気づいたのですが、健康状態を改善し、労働生産性が上がっていく企業は、ほとんどがチームで取り組んでいます。健康を共通のテーマとして励まし合ったり褒め合ったりから生まれる関係が、生産性やモチベーションの向上につながるのではないかと思います。
人生100年時代に入った現代で、健康経営は経営戦略として不可欠です。しかし実際には、どう進めればいいかよく分からないとの声がまだまだ聞かれます。私が勧めるのは、まず第1に自社の健康課題を知ることです。特定健診のデータをしっかりと把握、分析し、同業他社がどのような健康課題を持っているかなどの例を参考にすると良いでしょう。従業員の健康状態の特徴がどこにあるかを知ったら第2ステージは実行です。「健康経営アドバイザー」の皆さんが持っている先行事例をもとに、職場の文化や動線にフィットするような工夫が必要になります。例えば血圧計を導入する場合、みんなが測れる場所に置いて、リーダーが率先して血圧を測るとそれがコミュニケーションにつながります。血圧計を買ってただ血圧を測るのは健康管理。血圧計を利用して従業員の働き方に寄り添うのが健康経営。やることは似ていますが、健康の先にある企業の活力アップが大切です。第3ステージは経営者やリーダーが、職場で取り組みの様子をしっかり把握し応援すること。これがうまくできると継続・成功につながります。
健康経営という言葉は知らなくてもすでに実行していたという企業もあると思います。実は日本に昔からあった、経営者と距離が近い家族的な経営理念とは非常に親和性があるんです。それが人生100年時代の課題にフィットしたのだと思います。健康経営において、経営者にしかできないことは、取り組む思いを自分の言葉で伝えることです。宮城県は健康課題が明確で目標が共有され、非常に団結して進めている印象を受けました。あとは先行事例を参考に生かしながら、外部資源を活用して各企業に取り組んでいただきたい。それがまた新たな事例となり次の成功を呼ぶ。そんな良い循環になっていってほしいと願っています。
宮城県における健康経営の意識統一と、プロジェクト推進を目的とする「健康経営推進意見交換会」が11月12日、河北新報社1階セミナールームで開催された。初めに東京大学未来ビジョン研究センターデータヘルス研究ユニット特任教授の古井祐司氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授の辻󠄀一郎氏、東北大学名誉教授・東北福祉大学特任教授の関田康慶氏ら3人の有識者が、健康経営の最新情報を提供。その後、関係団体・企業がこれまでの取り組みを紹介して意見交換を行った。辻󠄀氏は「健康長寿はこれからの大きなビジネスチャンス」と訴え、関田氏は「小規模な企業の方が関心が高いと感じる」と分析。最後に古井氏が「宮城県内の認知度の高まりを感じた。先行事例を財産としてうまく利用し、モチベーションを持続していってほしい」と締めくくった。
2019年12月11日付
河北新報朝刊_特集紙面 Vol.3より転載
地方自治体、
協会けんぽ支部と連携
このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
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