vol.07
企業主導で従業員の心身の健康づくりと生活習慣の改善を図る「健康経営」。コロナ禍においてもその取り組みが役立った例は多く、ますます重要性が注目されている。河北新報社は、経営者や労務管理者を対象に健康経営勉強会を会場とオンラインで同時開催。宮城県、全国健康保険協会(協会けんぽ)宮城支部の取り組み紹介などが行われた。
(2020年11月11 日/会場・オンライン同時開催)
宮城県保健福祉部健康推進課
髙橋 悟 氏
「スマートみやぎ健民会議」を核とした健康づくり県民運動を進めている宮城県。県保健福祉部健康推進課長の髙橋悟氏は最近の健康課題や取り組みの状況について紹介した。
まず説明したのは宮城県内のメタボリックシンドローム該当者・予備群が、10年連続全国ワースト3位以内を継続している状況。「歩かない人が多い」「塩分過剰」「喫煙者が多い」の項目でも、ワーストから数えた方が早いことにも触れ「働き盛り世代を守るためには会社ぐるみの健康づくりが大切だ」と訴えた。
髙橋氏は県が目指す健康づくりの4つの基本方針のうち「ソーシャルキャピタルの再構築」の重要性に触れ、「健康づくりが自然と実践できる環境づくりが必要」と説明。従業員の健康を応援する県の取り組み「スマートみやぎ健民会議」への参加をあらためて促した。健康情報発信や、健康チェックなどができる「みやぎヘルスサテライトステーション」の設置は地域による偏りがあるとし、県内全域へ広げたいと話した。さらに、今後はメタボ対策として「減塩! あと3g」「歩こう! あと15分」「めざせ! 受動喫煙ゼロ」の3つプラス「歯科保健」に重点的に取り組むと強調。そして、3、15、0の数字と結び付け「脱メタボ! みやぎ健康3.15.0(サイコー)宣言!」キャンペーンを11月から展開すると発表した。健康オタクだったとのエピソードが伝わる伊達政宗公にちなみ、伊達武将隊を登場させたポスターの作成、ウェブサイトの充実、SNS、人気ユーチューバーとのコラボなど、健康への無関心層へも届くように、さまざまなPR活動を集中的に行っていく方針だ。
伊達武将隊を登場させ、「脱メタボ!みやぎ健康3.15.0(サイコー)宣言!」キャンペーンをPR
キャンペーンは4分野にわたって実施。《運動推進》では、今年度スマートみやぎ健民会議の会員を対象に、みやぎウォーキングアプリを使用した企業対抗運動会の開催を予定していると発表。《減塩》については、一昨年より「ベジプラス100&塩eco推進事業」に取り組んでいる。また小学生対象の「朝ごはんにベジプラスチャレンジ」や、社員食堂での野菜メニュー強化などを県内全域で既に実施している。《受動喫煙対策》では、改正健康増進法が4月より全面施行になり、受動喫煙を防止する対策が義務化されたことを受け、未成年者、妊婦への最大限の配慮を促した。《歯科保健対策》については大人の歯周病対策の必要性を強調。「歯科保健対策が企業の生産性の向上や医療費抑制につながることを認識してほしい」と呼びかけた。
最後に髙橋氏は「今後も産・学・官と県民が一緒に楽しく健康づくりができる健康みやぎに取り組んでいく。皆さまもぜひ4つの脱メタボ対策に参加してほしい」と締めくくった。
全国健康保険協会宮城支部
髙田 信也 氏
全国で約235万、宮城県内約4万1千事業所が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)からは、宮城支部の髙田信也氏が登壇。「職場健康づくり宣言」の詳細や、他社の取り組み事例などについて講演した。
まず髙田氏は、宮城支部が2016年から開始した「職場健康づくり宣言」事業について説明。登録の基準や宣言後のサポート内容を述べた。6つ挙げた登録基準のうち、《社員の生活習慣改善を支援すること》の項目では「健診でメタボ基準に該当者がいた場合は、協会けんぽが会社に保健師を派遣し無料で特定保健指導を行っているので積極的に活用してほしい」と呼びかけた。また、《事業所独自の健康増進対策に取り組むこと》では、食の改善、受動喫煙防止、感染症予防など、何から始めても良いと話し「インフルエンザ対策で消毒液を置くなどしていた事業所は、今回の新型コロナウイルス対策にいち早く取り組めている」と語った。宣言後のサポートについては、「1年後に同業他社や県平均と比較できるデータ提供などで、継続を支えていく」と述べ、データを活用した企業の〝従業員の健康リスクが明確になり、会社として取り組むべき理由を説明しやすい〞〝生活習慣の見直しのきっかけになった〞などの声も紹介した。
宣言後のサポートとして、
「職場内健康づくり実践事例集」を提供
次に、具体的な取り組みの内容として、市内2社の事例を取り上げた。泉区の警備会社では、感染症対策の一環で免疫強化のためヨーグルトメーカーを購入し、ヨーグルトを毎日社員に提供。また、社内の自動販売機の全飲料に角砂糖換算で糖分を表記している。これについて髙田氏は「社員自らの意識変化を導き出す上手なやり方」と評価した。太白区の教育・学習支援企業は、「歩数チャレンジ」と題して1人1日1万歩の目標で、運動を推進。「毎月達成者の表彰と賞品授与を実施している。達成意欲をかきたてるのも一つの手段」と髙田氏。同社は週休3日制の導入で年間休日145日以上を実施するなど、ワークライフバランスの実現にも力を入れている。その他の企業による取り組みの一例として「勤務時間中に5分程度の散歩を許可」「休憩所の醤油を減塩に切り替える」「会社で使う車を禁煙にする」などを紹介。「簡単にできることもあるので、ぜひヒントにしてほしい」と促した。
続いて、経済産業省が推進している「健康経営優良法人認定制度」について説明。同制度の中小規模法人部門には、宮城支部加入事業者からも2019年に39社、2020年には82社が認定を受けているとし「認定を受けると、社内の健康に対する意識向上や、企業イメージアップによる人材確保など、メリットも多い。皆さまにもぜひ上を目指してチャレンジしていただきたい」と勧めた。
株式会社宮城衛生環境公社
常務取締役
佐藤 理恵 さん
弊社は2020健康経営優良法人の認定を頂きましたが、そこで終わりではなくスタートだと考え、最新の健康経営を勉強したいと思い参加しました。
講演で宮城県さんの健康啓発支援ツールの紹介などもあり、新しい情報で勉強させてもらいました。会社内でフィードバックし社員が健康で会社と共に成長できるようにしていきたいと思います。
SOMPO
ひまわり生命保険株式会社
玉澤 卓明 さん
職場健康づくりの事例が参考になりました。事務所にヨーグルトメーカーを設置し毎日ヨーグルトを取ることで、従業員のインフルエンザ発症率が減少するなどの効果につながったという他社事例が印象的でした。当社でも実施を検討してみたいです。
また、当然だと思っていた福利厚生が非常にありがたいものであると理解できました。
2020年12月11日付 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.7より転載
このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
河北新報掲載の特集紙面は以下よりダウンロードできます。