vol.15

健康経営勉強会 開催
「健康経営」実践で企業力アップ

「健康経営」で目指す、
人と企業と社会の好循環

従業員の心身の健康づくりと生活習慣の改善を図る「健康経営®」への関心は年々高まりつつある。企業経営への効果が認識されてきて、今後さらに注目を集めそうだ。河北新報社は、経営者や労務管理者を対象に健康経営勉強会を開催。有識者の講演に、全国健康保険協会(協会けんぽ)宮城支部、協賛企業の取り組み紹介などが行われた。

TOPIC. 01

先行事例、
ヘルスケア産業活用が効果的
~健康経営に期待される効果~

東北大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学分野

辻󠄀 一郎 教授

「健康みやぎサポーターズ」のスタート時から監修役を担う辻一郎教授は、「健康経営に期待される効果」と題し講演した。冒頭、「健康日本21」で国が目指す国民の健康づくりの目標値に対し、「メタボ該当者と予備軍の人数」「高血圧」「高コレステロール」「喫煙」「飲酒」などの生活習慣・危険因子項目が、この約10年間で横ばい、または悪化傾向だとグラフを用いて指摘。「この状況が続けば日本人の健康状態は10年後、20年後に目に見えて悪化する恐れもあると危惧し、「次の健康づくりプランでより実効性のある取り組みをするために、健康経営の重要性はますます高まる」と強調した。

次に、健康経営への企業の意欲を高めるための国のインセンティブとして「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人制度」を紹介。2021年度の健康経営調査の結果、大規模法人の健康経営優良法人認定は、6年間で10倍近くになっており「大企業はこぞって参加している」と述べた。また、同制度の中小規模法人部門についても、認定数と増加率が近年急増していることを説明。都道府県別の認定数についても触れ「宮城県は東北で最も認定数が多く、特にこの1年間の伸びが著しい。認定企業を訪ねると、共通して会社全体が明るく、社員が生き生きと楽しそうに仕事をしている。それも一つの健康経営の効果」と経験を交えながら話した。そのほか期待される効果についても、データをもとにさまざまな生活習慣病リスク率の低下や、年間医療費の削減を挙げた。


出典:経済産業省「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)の申請状況」

また、会社のコストに対してはプレゼンティズム(出勤しても心身の不調により生産性が低下すること)も大きな影響を及ぼすと話し、「特にメンタル問題への対策として職場内のコミュニケーション活性化やワークライフバランスの確保、ワークエンゲージメントを高めることが重要」と強調した。他にも、就活生へのインパクト、離職率の低下、企業業績アップ、ステークホルダーからの評価などの効果を示し、「近年多くの取り組み事例や、ヘルスケア産業が整ってきている。それらを応用・利用して効果的な健康経営が可能。ぜひ取り組んでほしい」と呼び掛けた。

TOPIC. 02

職場の健康づくりしっかりサポート
「特定保健指導」の積極的な活用を

全国健康保険協会宮城支部 企画総務グループ主任

高橋 耕平

高橋氏は、全国健康保険協会(協会けんぽ)宮城支部が実施する「職場健康づくり宣言」の概要や、健康経営に関する取り組みについて講演。宮城県民の生活習慣病リスクが全国の中でも高いことを説明した後、職場健康づくり宣言で同支部が行っている継続的な支援に向けた取り組みを紹介。「従業員の健康保持・増進のため、企業と協会けんぽが連携して職場の健康課題の解決に取り組むことが必要」と呼び掛けた。

続いて、同支部加入事業所で2022健康経営優良法人認定企業を対象に行った実態調査の結果を紹介。「2年連続で認定を取得した93事業所の全てが、社員の健康意識が高まったことを実感しており、企業イメージが向上したとの回答も多かった」と説明した。さらに調査結果を受け、支部では今年、食事、運動、メンタルヘルスの出前健康講座を実施したことを報告。ほかにも情報提供の拡大や専門家のサポートを実施し、フォローアップ体制強化を図っていることを紹介した。最後に「まず職場健康づくり宣言をしていただき、優良法人認定を目指した取り組みを進めてほしい」と訴えた。

健康経営を進める協賛企業の取り組み

協賛企業の取り組み1

株式会社ミツカン

1日約大さじ1杯の酢でおいしく健康に
酢酸効果の検証データを紹介

マーケティング本部 食酢エキスパート
赤野 裕文

赤野氏は、食酢に含まれる成分の健康効果と健康経営への活用について講演した。まず、食酢の成り立ちと製法、会社の歴史について紹介。「酢は体に良いというイメージがある。健康改善に関与するのは酢酸という成分で、どの酢にも含まれているので調味料として上手に摂取することで、健康効果が期待できる」と説明した。

次に、同社が検証してきた、肥満気味の方の内臓脂肪減少や高めの血圧の低下、食後の血糖値上昇の緩和への酢酸の効果をグラフで示しながら、「約大さじ1杯の酢が、健康でおいしい食生活を継続する適量の目安」と勧めた。

さらに創業地で本社のある愛知県半田市の市民を対象に、昨年実施された「お酢15㎖体験プログラム」の結果も紹介。同様の効果が検証できたことを報告した。最後に、酢の調理機能の一つ、「おいしく減塩」についても触れ、「料理重量に対して1%前後の酢を加えると、酸味を感じずおいしさを引き立て、他の塩分調味料を減らせる。“隠し酢”を使った減塩のコツをホームページでも紹介している。ぜひ試してほしい」と締めくくった。

協賛企業の取り組み2

株式会社ユカリエ

健康な食とシニアの技の組み合わせ
地域の元気な風土づくり目指す

ジーバーFOOD 代表 永野 健太

不動産業を中心に事業展開する(株)ユカリエが、11月より本格始動させる新事業「ジーバーFOOD」について説明した。同事業は、地元のシニアが栄養バランスのとれたヘルシーな弁当を作り、企業の働く世代へ向けて宅配するもの。「地元(ジバ)の高齢者(ジーちゃん・バーちゃん)の力で新しい風土(フウド)を作り、食(フード)を通じて健康を届けたい」との思いのもと立ち上げられた。永野氏は、「元気なシニアに活躍の場を提供し、働く世代に健康な食を届け、地域が元気になり企業の経営にも好影響を与える。こうした良い循環を社会に広げることは、健康経営に直結する取り組みだと思う」と話した。

さらに発展型として、弁当箱の宅配・回収を利用したシニアと若い働く世代の手紙のやりとりで、メンタルのサポートを目指す「ジーバーメンター」を企画していると明かした。来年1月の契約企業への宅配販売スタートを前に、「社員を健康にする福利厚生の一つとして企業に取り入れてもらえるよう、引き続き啓蒙活動を行っていく。ぜひ応援していただきたい」と意欲を見せた。

「健康経営勉強会」参加者の声

「食」の工夫の大切さ実感

仕事で健康事業推進に携わっています。食や運動についての講演で企業に伺うこともあるので 、こうした勉強会は私たちができる健康サポートについて考えるよい機会となっています。今回教えていただいたようなヘルシーでおいしいお弁当と組み合わせることで、健康管理が楽しく効果的に進められると感じています。これからも"楽しく健康に"を考えていきたいです。

医療法人社団進興会
せんだい総合健診クリニック

菊地 恵観子 さん

その他、たくさんのコメントを頂きました

  • この10年間で生活習慣病が悪化している現実を目の当たりにしました。健康経営の重要性を再認識し、将来のためにも率先して取り組んでいきたいと考える機会になりました。
  • 健康経営優良法人の離職率が低いことは、ばく然とイメージしていましたが、具体的な数値を見ることで、改めて健康経営の効果が大きいことを理解できました。
  • アンケートで、「健康経営は個人が意識して行うべきもの」という回答があったことをお聞きし、企業として健康経営のメリットの浸透に向けて、まだまだ取り組む余地があると実感しました。「職場健康づくり宣言」はハードルが高くないので多くの中小企業が取り組むべきだと感じました。
  • 宮城県内の状況が分かり、「メタボ県」が強く印象に残りました。自社における健康経営の取り組みをより一層推進していく必要があると感じました。
  • 「お酢=身体に良い」というイメージはありましたが、内臓脂肪の減少や血圧の低下など具体的な効果を知り勉強になりました。スプーン1杯など簡単に始められるものなので、家族にも勧めたいと思います。
  • シニア世代の活躍、食生活の大切さが融合する「ジーバーFOOD」の取り組みは素晴らしいと思う。また、これが食品ロス軽減、SDGsにつながれば良いと思う。
  • 従業員の健診は年1・2回実施しているが、その後一人一人のサポートはできていないのが現状です。参考にさせていただきます。

2022年11月21日付 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.15より転載

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このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
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