vol.18
「健康経営®」とは、従業員の健康を経営上の重要な資源と捉え、健康増進に取り組む経営方針のことで、県内でも実践する企業が増える中、社会動向の変化により新たな課題も生まれています。本紙面では課題解決のヒントとなる認定制度や、分かりやすく健康経営を学ぶ勉強会開催についてお伝えします。
健康経営優良法人認定事務局
(経済産業省補助事業者 日本経済新聞社)
経済産業省は2022年度より、民間の工夫を生かせる補助事業を活用し健康経営の更なる普及・拡大に向け取り組んでいます。ポータルサイト「ACTION!健康経営」での情報発信や、「健康経営優良法人認定制度」の申請窓口を担う、健康経営優良法人認定事務局の藤尾典篤さんに、昨今の取り組み状況や課題について伺いました。
「健康経営優良法人認定制度」は大規模法人部門・中小規模法人部門の部門別に、健康経営に取り組む優良な法人を認定し「見える化」する制度で、認定法人が内外から評価される環境づくりを目指しています。2023年3月現在、認定を申請する法人は全国で約1万7千社にのぼり、認定法人で働く従業員数は837万人で、その数は日本の被雇用者の約15%を占めています。宮城県でも中小規模法人の349社が認定を受け、前年比131%、全国で4番目に高い増加率となっており、健康経営に対する認知の高まりや積極的な姿勢がうかがえます。
こうした状況について藤尾さんは、「少子高齢化が加速し、労働者の高齢化や採用市場の激化など、人材に対する企業課題の増加を背景に、健康経営への注目度が高まっている」と話します。
これから始めようと考えている企業はもちろん、既に取り組んでいる企業も、今後どのように健康経営を進めていけばよいのでしょうか。
大きく変化する社会動向を踏まえ、23年度の健康経営優良法人認定制度においても、いくつかの認定要件が改訂されました。その一つが「仕事と育児・介護の両立支援」で、介護を抱える従業員の把握や男性の育休の取得率など、従業員の適切な働き方を問う内容となっています。また、月経や更年期症状など、女性の健康課題に関する認知向上のため「女性特有の健康課題への対応」も評価要件を深掘りし、「生産性低下防止のための取組」では、評価項目の一例として新たに花粉症および眼精疲労に対する具体的な支援が追加されました。藤尾さんは「改訂項目にも表れているように、人的資本を多角的に捉えさまざまな課題に向き合うことで生産性が高まり、企業価値向上につながると考えます」と展望を語ります。
食事や運動習慣などの健康維持・改善対策以外にも、労働環境の整備や従業員の働きがい向上など、多様な分野からのアプローチが求められています。
健康経営に取り組む企業が増える中、「社内で健康経営を進めてはいるが、なかなか浸透しない」、「地域や他社の取り組み事例を知りたい」という声も増えています。藤尾さんは「社内で取り組みのキーマンを決めて健康保険組合・協会けんぽなど保険者と連携し事例を聞き、できることから始めてほしい。従業員のヘルスリテラシーの蓄積や、健康状態の変化を観察・伝えることで、価値が実感できるようになります」と改善のヒントを話します。
ポータルサイト「ACTION!健康経営」では、取り組みに役立つ情報やコンテンツなどを随時更新。健康経営優良法人の申請方法や期間、申請から認定までの流れなどが分かりやすく紹介されているほか、各地のセミナー情報などを紹介し普及に努めています。こうした情報や機会を活用し、健康経営の「今」を知り、一歩進んだ健康経営を目指しましょう。
2023年9月22日付 河北新報朝刊_特集紙面 Vol.18より転載
このページの内容は河北新報に掲載された特集紙面を一部再編集してご紹介しています。
河北新報掲載の特集紙面は以下よりダウンロードできます。