河北新報特集紙面2021
2021年11月26日 河北新報掲載
中学生28人”記者”となって復興の先端へ
- 事前オリエンテーション▼
- 現地で見て、
感じたことを同世代に伝え、
未来に備えるために。
東日本大震災発生時はまだ幼かったため、当時の記憶がおぼろげな中学生たちが、記憶と教訓の若き担い手となるべく復興の現場を取材し、震災伝承新聞の記事執筆に挑戦。秀光中学校・仙台市立宮城野中学校・尚絅学院中学校の生徒28人が参加してくれました。
事前に震災による被害状況や訪問先の情報などを予習し、取材方法などを習得するオリエンテーションを各校で開催。記者経験のあるプロジェクトメンバーがそれぞれの学校を訪ね、インタビューのコツや記事の書き方などを詳しくレクチャーしました。
秀光中学校
仙台市立宮城野中学校
尚絅学院中学校
岩沼市
10月2日に岩沼市を訪れたのは、秀光中の10人。一行は下野郷地区にある復興のシンボル「千年希望の丘」へ向かい、語り部の渡邉良子さんから丘に込められた意味と役割について聞きました。
次の目的地は、岩沼市の農業復興支援活動とその継続を目的とした事業を創出するための拠点「岩沼みんなの家」。ここでは、岩沼みんなのアグリツーリズム&イノベーション代表理事を務める谷地沼富勝さんに、農業を通じた地域交流について教えてもらいました。
仙台国際空港内にあるレストランでの昼食を挟み、施設営業部の木村昭仁さんと管理部の高山東志江さんに取材。空港の被災から再開までの歩みと、災害時における国内外との協力体制について知りました。
実際の津波到達の高さを実感
千年希望の丘の慰霊碑前で取材
岩沼産の農産物が集まる岩沼みんなの家
空港の災害対策についてヒアリング
- 花田 稟果さん(1年)
- まだ被災地を訪問したことのない人は、ぜひ足を運んでみてほしいと思いました。震災の悲惨さや復興について、必ず何かを感じると思います。今幸せに暮らせていることに感謝しながら、日々を大切に過ごして行きたいとあらためて感じました。
- 国本 鈇烈さん(3年)
- 千年希望の丘は震災前まで多くの人が住んでいた場所とは考えられないような静けさでした。丘の向こうに広がる海が人も家も飲み込んだと考えると恐ろしいと思いましたが、ただ恐れるだけでなく、そこから何を学び教訓として生かしていくのかが大切だと感じました。
山元町
10月17日の取材に取り組んだのは宮城野中の9人。山元町立山元中学校(旧山下中学校)で、発災時の校長でやまもと語りべの会の渡辺修次会長が先導して犠牲となった在校生を悼む命の碑と避難所となった校舎内を見学。山元中3年の佐藤禅介さんにも話を聞くことができ、12歳で防災士資格試験に挑戦した経緯について語ってくれました。
一行は震災遺構「中浜小学校」へ移動し、ここでは、やまもと語りべの会の中浜小元校長井上剛さんのガイドで遺構内を見学しました。
ご当地名物のはらこ飯でお腹を満たし、最後はホッキガイ漁が盛んな磯浜漁港へ。宮城県漁業協同組合仙南支所の岩佐敏運営委員長から、漁を再開するまでの苦労や工夫について話を聞きました。
避難所となった当時を振り返る渡辺会長
防災士の資格を持つ佐藤禅介さん
津波の猛威を感じさせる震災遺構内部
ホッキガイの選別について学ぶ中学生
- 安藤 凛子さん(2年)
- 今まで震災のことを数学や理科のような感覚で学んでしまっていましたが、教え子が犠牲となった渡辺さんの「語ることは辛い」という言葉にハッとしました。過去の出来事で終わらせず、繰り返してはいけないこととして考える必要があると思いました。
- 伊東 柊真さん(2年)
- 被害にあった現地の方へ取材をするのは初めてだったので、本当に大変なことが起きたということを肌で感じました。自然には勝つことができないかもしれないけれど、被害を最小限にする努力はできるということを学びました。
女川町
尚絅学院中の2年生9人は10月23日、旧女川交番で女川いのちの石碑プロジェクト実行委員会の鈴木智博さんと対面。旧女川中学校では、石碑を前に、プロジェクト発足当時中学生だった鈴木さんと思いを重ねながら取材を行いました。
女川町まちなか交流館で昼食後、みなとまちセラミカ工房代表の阿部鳴美さんから、スペインタイルの事業を始めた経緯について取材。事前にデザインしたタイルの彩色にも挑戦しました。
また、女川みらい創造株式会社の代表取締役社長を務める阿部喜英さんからは、震災後の官民一体となって進められた街づくりについて聞き取り。さらに、将来の展望についても迫りました。
石碑を建てる意義を伝える鈴木智博さん
女川いのちの教科書を手に話を聞く中学生
スペインタイルの彩色にチャレンジ
震災後の街づくりについて取材
- 佐藤 叶那さん(2年)
- 今まで津波の高さや映像を見聞きしても本当に起きたことなのかと実感が湧きませんでしたが、基礎のコンクリート杭(くい)から津波で横倒しになった旧女川交番を実際にみて恐ろしさを感じました。自分の命を守るため、日々の備えをしていきたいと思います。
- 柳沼 和奏さん(2年)
- 今の自分たちと同じ年代だった鈴木さんが修学旅行先での募金などで石碑の設置資金1000万円を集めたと聞き、とても驚きました。1000年先の未来の町の人のためにここまで行動を起こしたことを、女川町以外の方へも知ってほしいと思いました。
現在、中学生記者たちが取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の制作に奮闘中です!
現在、中学生記者たちが
取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の
制作に奮闘中です!