河北新報特集紙面2021
2022年11月25日 河北新報掲載
中学生26人”記者”となって復興の現場へ
- 事前オリエンテーション▼
- 現地で見て、
感じたことを同世代に
伝える記事を書くために。
将来の大災害に備える教訓の若き担い手である中学生たちに、宮城県内各地の被災地を視察してもらい、復興の現場を取材して震災伝承新聞の記事執筆に挑戦してもらいました。今年度は、仙台市立八乙女中学校・多賀城市立東豊中学校・名取市立閖上小中学校の生徒26人が参加。事前に震災による被害状況や訪問先の情報などを予習し、取材方法などを習得するオリエンテーションを各校で開催。記者経験のあるプロジェクトメンバーが各学校を訪ね、インタビューのコツや記事の書き方などを詳しくレクチャーしました。
仙台市立八乙女中学校
多賀城市立東豊中学校
名取市立閖上小中学校
亘理町
▲あらはマップ
9月17日、八乙女中1年生の9人は亘理町立荒浜中学校で、防災と観光の両方で使える「あらはマップ」づくりに携わった生徒会役員の伊藤聖那さん、木村心優さん、指導に当たった菅原康広先生、NPO法人海族DMCの太見洋介理事長に制作の経緯を聞きました。
太見さんの案内で、「荒浜防災公園」を見学した後、「あらはま海苔(のり)合同会社」代表、菊地幹彦さんに海苔養殖について取材。その海苔を使った料理を「トラットリア・デル・ソーレ」で味わいました。
漁協直売所「鳥の海ふれあい市場」で震災当時の記録写真を見た後、「わたり温泉 鳥の海」で半田英明支配人と従業員の寒河江佑介さんから、津波襲来時のエピソードと温泉施設を核とする地域再生への展望に耳を傾けました。
「あらはマップ」を手に説明する荒浜中の生徒
海苔を加工する工程も見学
海苔の風味が香るパスタに感動
半田支配人による荒浜再生の取り組み説明
- 島崎 杜和さん(1年)
- 震災が発災した時、僕は生まれてはいましたが、確たる記憶はありません。それでも震災を知識としては知っています。それは家族やニュースなど多くの人たちが震災について語っているから。これからは僕たちが今回の取材で知った被災実態を次世代に伝える番です。
- 藤原 音乃さん(1年)
- 取材でお話を聞いた方は涙ながらに当時を振り返っていました。私はネットやニュースを通して震災のことを知ったつもりでいましたが、今回の取材を通して人から人に語り継いでこそ、被災の大変さ、つらさ、苦しさを伝えることができることに気づかされました。
石巻市・女川町
東豊中の2年生9人は10月14日、石巻市泉町にあるゲストハウス「OGAWA(オガワ)」へ。石巻クリエイティブチーム、巻組(まきぐみ)が手がける空き家を再活用する取り組みについて、スタッフの平塚杏奈さんの案内で建物内を見学しました。
「石巻市震災遺構門脇小学校」では、館長のリチャード・ハルバーシュタットさんと、開設に尽力した学芸員の高橋広子さんが出迎えてくれました。館内各所で詳しい解説を聞いた後、この施設が伝えたい教訓や地域の人々が抱く思いを話してもらいました。
女川町では、ダイビングサービス「ハイブリッジ」を訪問。代表の髙橋正祥さんと、妻の捜索をきっかけに潜水士資格を取得した高松康雄さんに、女川の海の状況や現在も続く海中捜索などについて聞きました。
平塚さんがゲストハウスを案内
津波火災と垂直避難について解説
震災当時の地域の状況を伝えるリチャードさん
ハイブリッジ店内で取材する中学生たち
- 谷津 凪咲さん(2年)
- 震災遺構門脇小学校を取材して、避難場所選びが大切だと知りました。避難するときには少しでも冷静になれるよう深呼吸をするなど工夫し、大きな災害が起きたときには今回の取材経験を生かして自分の命はもちろん、他の人の命も救えるようになりたいです。
- 五十嵐 春也さん(2年)
- 震災で何があったかを語り継いでいくことが、私たちにできる最大の復興支援ということに今回の取材で気がつきました。私は発災時2歳で当時の記憶がほとんどありません。ですが、実際に経験した人から学び、震災を知らない人に伝えていくことはできると思いました。
東松島市
自宅が被災した数人を含む閖上小中学校の7年生・8年生(中学1年・2年に相当)の8人は10月15日、東松島市での取材に参加。
東松島へ向かうバスには、東松島市立大曲小学校5年在学時に震災を経験し、現在語り部活動に取り組んでいる東北学院大4年の雁部那由多さんが同行。車中で災害に備える心構えを聞き、大曲小では雁部さんの被災体験をもとに深掘りする取材を行いました。
JR陸前小野駅前の交流施設「空の駅」では、保存性が高く、災害時でもおいしく食事が取れるレトルト食品の有効性を学び、国内外で人気のソックスモンキー「おのくん」の体験制作に挑戦。それぞれ個性豊かなおのくんを手に記念撮影を行い、取材を締めくくりました。なお、震災伝承新聞では、閖上小中学校自身の防災減災活動についても紹介します。
バス車中で被災体験を語る雁部那由多さん
雁部さんの体験談を聞く中学生
完成したおのくんを手に空の駅の皆さんと
地域合同防災訓練での避難者対応
- 得地 璃湖さん(8年)
- 取材先で出会ったのは、未来に希望を託して生きる方々でした。震災ですべてを失っても命さえあれば、また笑い合える。その笑顔はとても輝いていました。直接お話を伺うことで、震災を疑似体験する感覚を味わい、改めて命の尊さと伝承の大切さを痛感しました。
- 大保 颯槻さん(8年)
- 大曲小5年の授業中に被災した雁部さんが語った体験談からは、震災が心に残した計り知れない傷の深さを学びました。被災した女性たちが作り始めたおのくんが、つらい日々の中で新たな人とのつながりを生んだというお話からも新たな視点を得られたように思います。
現在、中学生記者たちが取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の制作に奮闘中です!
現在、中学生記者たちが
取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の
制作に奮闘中です!