河北新報特集紙面2022

2022年12月6日 河北新報掲載 
わが子に伝えたい、備えと知恵を体験

わが子に伝えたい、備えと知恵を体験

わが子に伝えたい、
備えと知恵を体験

 今回は気仙沼市本吉地区を訪ね、
防災へのさまざまな備えを実体験しました。
案内役は、震災以降、
海から遠のいていた地元の子どもたちに海の魅力を伝え、
笑顔を取り戻そうと活動するNPO法人「浜わらす」。
豊かな自然を感じながら、災害時にはもちろん、
日常の生活にも役立つ実践的な知識と工夫を、
楽しみながら学んできました。

チームのコミュニケーションを発揮して火起こし&ポリ袋炊飯を成功させよう!

 秋晴れの朝、仙台駅を出発した参加者は一路、気仙沼市本吉町大谷地区へ。目的地は高台の寺院・清凉院の敷地内にあるNPO法人「浜わらす」。東日本大震災の発生直後、清凉院には最大で400人の地域住民が避難し、約半年間、共同生活を送りました。
 「共同生活で一番大事なのは知らない人同士のコミュニケーション。今日は初対面の人とチームを組んで火起こしや炊飯を体験します。ここを避難所だと思って、自己紹介から始めましょう」と声がけするのは「浜わらす」事務局長の天澤寛子さん。最初は恥ずかしがっていた子どももいましたが、特技を交えた自己紹介のおかげで笑いも起き、一気に距離が縮まったよう。
 そんなタイミンングを見計らったように「ポリ袋炊飯の準備を始めまーす!」と号令がかかります。ポリ袋炊飯はポリ袋に米と水を1対1の割合で入れ、沸騰した鍋にまとめて入れて炊飯する方法。衛生的かつ一度にたくさんのご飯が炊けるので覚えておくと災害時やキャンプなどで役立ちます。
 次に畠山幸治さんら「地域の達人」が薪割りやファイヤースターターを使った火起こしのコツを丁寧に教えてくれました。初めて体験する子どもも「がんばれ! もう少し」の応援を受け、集中力を発揮。火がついた瞬間には、チーム全員が拍手と歓声で盛り上がりました。「避難所でも、火がついたり、電気がついたりすると自然に拍手が起きてみんな笑顔になる。ホッとする瞬間だったんだよね」と当時を振り返る畠山さん。参加者もみんな深くうなずいていました。

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「浜わらす」の活動拠点に集合した参加者たち

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チームで声をかけ合いながら
火起こしとポリ袋炊飯の準備

乾物の味、香りの深さを再発見

写真 火の番を達人たちに託し、参加者は前浜マリンセンターへ。木の温もりあふれるセンターは、国内外から多くの支援を受け、地域の人たちも建築に参加し完成した自治会館。体験するのは「五感で感じるふりかけ作り」です。講師は乾物を扱う小野寺商店の小野寺由美子さん。「キットを使って乾物の素材本来の味や香り、食感を楽しみながらマイふりかけを作ってみましょう」と呼びかけました。7種類の素材を試食しながら自分好みに仕上げたふりかけに「パリパリでおいしい」とみんな満足そう。毎日の食卓はもちろん、保存が利くので災害時もいつもの味を食べられる食材は心強いですね。

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写真左/作り方を説明する小野寺さん
写真右/ふりかけの材料をミニすりこぎで
好みの配合に混ぜ混ぜ

青空の下、炊き立てご飯&カレーでいただきます!

 ふりかけ作りの後は、非常食の管理に役立つローリングストックについてのお話です。非常食を定期的に「備える→食べる→買い足す」ことで賞味期限の管理を簡単に行え、常に新しいものに入れ替えて備蓄できることがメリット。
 話が一段落した頃、達人たちが炊き立てのご飯と、ローリングストックにもぴったりのNISHIKIYA KITCHENのレトルトカレーを届けてくれました。ポリ袋炊飯のご飯はどのチームもふっくらツヤツヤ、とてもおいしそう。5種類の中から好きな味のカレーを選んでいよいよお待ちかねのランチタイムです。青空の下、手作りふりかけも試しながら楽しいランチの時間を過ごしました。

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「おいしい! おかわり!」
そんな声が飛び交ったランチタイム

日常ももしもの時も心に癒やしを灯す手作りキャンドル

 食後は、2021年3月にリニューアルオープンした道の駅「大谷海岸」で散歩がてらのショッピング。地元の水産物などを購入したり、太平洋を一望できる2階の屋外デッキ、マンボウのプロジェクションマッピングなどを堪能しました。
 そして最後は、気仙沼で採集した貝殻やシーグラスを使ったジェルキャンドルづくり。「普段はインテリアとして飾っても楽しめますし、停電時には火を灯して使えるので災害の備えにもなります」と使い方を紹介するのは「浜わらす」の畠山友美子さん。避難所の運営を任された畠山幸治さんによる当時の振り返りにも耳を傾け、一日を通して、火起こしやポリ袋炊飯、コミュニケーションの取り方、ふりかけ作り、ジェルキャンドルと、日常でも使え、もしもの時に生きるさまざまな知恵や工夫をしっかり学んだ一日でした。

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ジェルキャンドル作りに挑戦

参加者の声

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 最近、転勤で東京から仙台に来られたという林上さんご一家。「子どもは東日本大震災の翌年に誕生したので、震災のことは知りません。縁があってこちらに住むことになり、子どもに震災や復興のこと、防災の知識などを伝えられたらと思っていました。こういう機会に恵まれて良かったです」と話す拓哉さん。初めての「火起こし体験」も親子で楽しかったと1日を振り返ってくれました。
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 「今日は地域の方々に避難所の話や力を合わせて復興にあたってきた体験談をたくさん伺いましたし、初対面の方とのチームワークなど、とてもためになることばかりでした。中でも一番印象に残っているのが畠山幸治さんの『迷惑はかけたり、かけられたりするのが当たり前。掛ける、受け止める勇気を持つ』という言葉でした」と直己さん。育児で感じていた周囲への意識が大きく変わったと明るい笑顔で話してくれました。