河北新報特集紙面2023
2024年3月30日 河北新報掲載
震災伝承新聞完成レポート②中学生がつなぐ記憶と教訓
命を守る備えの大切さを共有
昨年9月23日、塩竈二中の1、2年生6人は、都市型津波に襲われた多賀城市の浸水域を多賀城高校災害科学科の高校生が案内する「まち歩き」を体験取材。敷地に津波が到達する中で救助活動に出動した陸上自衛隊多賀城駐屯地では、過酷を極めた任務の聞き取りを行いました。多賀城市役所では市の危機管理部門の担当者と八幡上二区町内会の方をそれぞれ取材。都市部特有の津波被害と備えの大切さについて理解を深めました。
震災伝承新聞発行後の3月6日、読書の時間に震災伝承新聞を全校生徒で読み込んだ後、体育館に集った1、2年生を前に中学生記者が壇上で発表を行いました。まち歩き後の意見交換の場で震災を記憶する最後の世代としての決意を語った高校生から気づきを得たメンバーは、記憶のバトンを受け継ぐことの大切さを訴えました。自ら被災した自衛隊多賀城駐屯地の記事をまとめた班は、平時から災害に備えることで、いざというときに役割を果たせることをアピール。多賀城市役所での取材内容を記事にした中学生記者は「あの時こうすればよかった」という後悔の言葉を多賀城での取材を通して幾度も耳にしたことを紹介。災害を他人事にせず、我がこととして備えるよう呼びかけると、会場からは惜しみのない拍手が送られました。
資料をスクリーンに投影しながら防災講話で発表を行う中学生記者
発表会参加者
岡田 かれんさん(2年)
震災伝承新聞を読んで、私も後世に語り継いでいきたいと思いました。中学生記者の発表から、自分の身は自分で守ることの必要性を改めて考えました。平和な時間は当たり前ではなく、今の生活や周りの人を大切にしていきたいです。
今回参加した中学生記者全員の「声」
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和地 舞佳さん(2年)
あの記憶を紡いでいく - 母から大震災があったことは教えてもらいましたが、詳しい被災状況は知りませんでした。今回、多賀城高校災害科学科の方に浸水域を案内してもらったり、自衛隊の方に救助体験をうかがったりすることで、初めて災害の残酷さと悲惨さを知ることができました。多賀城市役所の方には、震災を受けてどのような対策を講じたのかを説明してもらいました。
震災の記憶を風化させないために周りの人たちに伝えるとともに、今回学んだことを忘れずに、災害に備えていきたいと思います。
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山本 健正さん(2年)
津波被害 想像より甚大 - 多賀城駐屯地を訪ねたとき、冒頭で隊員の方が私たちに何度も繰り返した「後世に語り継いでほしい」という言葉の意味がよく分かりませんでした。しかしビデオを見た後、震災の過酷さや、被災した人々が未来を信じてその状況を乗り越えてきたということに気づかされました。震災の記憶がない私たちだからこそ震災を、被災した人々の思いや願いを受け継ぎ続けなければならないのです。いざというとき、自分には何ができるかを考えて生活していきたいと思いました。
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高橋 凜さん(2年)
次世代伝承こそが使命 - 今回の取材を通して震災について様々なことを感じ、学びました。取材で震災当時の写真や動画をたくさん見ました。想像していたよりはるかに被害が大きかったことを知りました。その大災害から復興のため、多くの方が努力を積み重ねてきたのかを学ぶことができました。ニュースを見ていると、大震災の津波よりも大きな津波が発生する可能性が専門家から指摘されています。発生したとき、今回得た知識をどのくらい活用できるのかが試されるのだと思いました。
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鈴木 緑さん(1年)
伝え守る私たちの未来 - 多賀城高校災害科学科の方々と多賀城市中心部の浸水域を歩きながら、震災当時の街の様子などさまざまな話を聞きました。何度も高校生の方々が言っていた「使命感」という言葉が印象に残りました。少しだけある震災の記憶をもとに当時の状況を学び、伝えるという強い決意を感じたからです。震災の記憶がない私たちの世代でも、今回の学びを通じて、自分たちの未来のためにできることがあると実感でき、とても有意義なプロジェクトになりました。
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小笠原 亜季さん(1年)
学び深め伝え広げ - 最も印象に残ったのは、多賀城高校災害科学科の方が言った「私たちが伝えなければいけないという使命感がある」という言葉です。私たちは震災の記憶はありませんが、高校生の人たちは断片的とはいえ記憶がありました。震災記憶がある最後の年代として、伝える責任があるという強い意志を感じました。さらに津波は海からだけでなく、川をさかのぼり堤防からあふれて押し寄せてくることを教えてもらいました。今回学んだことを多くの人に伝えたい、そして伝えなければいけないと思いました。
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細谷 陽樹さん(1年)
災害に対し意識高め - 私は正直、災害にはあまり関心がなく自分と遠い出来事だと考えていました。ですが、今回の取材を通じて自衛隊の方や、多賀城高校災害科学科の方から衝撃的な話を聞きました。私が特に心に残っているのは災害科学科の方々が「東日本大震災を被災したのは私たちの世代が最後だからこそ、私たちが後の世代に伝えていきたい」と話したことでした。私は震災の記憶はありませんが、被災した一人として責任感のようなものを持つことができました。そして災害に対しての意識を高めることができました。
「震災伝承新聞」は、宮城県内186の中学校へ配布したほか、愛媛県今治市の近見中学校と兵庫県西宮市の浜脇中学校などで教材として活用されました。東北各地の震災伝承施設、宮城県外の災害に関する研究を行う大学や団体、東京都・池袋「宮城ふるさとプラザ」、宮城県大阪事務所などでも配布しています。
震災伝承新聞の送付をご希望の学校、団体、施設等は事務局までお問い合わせください。
[お問い合わせ]
今できることプロジェクト事務局(河北新報社営業部)
tel 022-211-1318(平日10:00〜17:00)
中学生記者
細谷 陽樹さん(1年)
今回の活動を通して、自分自身の防災の意識を高めることができました。防災講話での発表では、うなずきながら聞いてくれる人たちが多く見られ、学校全体の防災意識も高めることができたと感じました。