河北新報特集紙面2024
2024年10月24日 河北新報掲載
震災伝承新聞被災地取材レポート③中学生記者が復興の現場へ
東日本大震災の記憶と教訓を将来に託す中学生たちが、宮城県内の被災地を取材し、その成果を「震災伝承新聞」として2025年2月に発行。宮城県内外の中学校や災害伝承施設へ8万部を配布します。今年度で5回目を数えるこの取り組み。今回も仙台市内の3校が参加し、取材のノウハウを説明するオリエンテーションを実施後、三条中の8人が松島町を訪問しました。
同世代に伝えるために
9月21日、仙台市立三条中の8人は、宮城の沿岸自治体では例外的に壊滅的な被害を免れた松島町を取材しました。三十刈駐車場で松島高校観光科の高校生と合流。県内きっての観光地である地元の要望で2014年に新設された観光科2年の4人が、訓練実習で観光客を津波避難誘導するルートを下りながら国宝瑞巌寺まで案内しました。観光科では、地域に貢献できる人材育成に向けた実習やボランティア活動に力を入れています。
震災前、瑞巌寺の参道周辺は樹齢400年の杉木立1000本に覆われていましたが、参道入口の総門から150㍍付近まで到達した津波と地盤沈下で、半数近くが枯死。発災当時、全国から1200人の観光客が松島を訪れており、全員が瑞巌寺の境内などに避難誘導されて事なきを得ています。一行は参道の傍らにある津波到達点の標識を確認した後、松島防災センターで松島観光協会の志賀寧会長の講話を聞きました。
松島高校観光科の生徒が
瑞巌寺参道の津波到達地点を説明
救急救命士の1期生である志賀さんは発災当時、塩釜地区消防事務組合の本部次長兼危機管理監を務めていました。周辺が冠水した消防本部に避難した住民20人以上を受け入れ、長野・兵庫・岡山などから駆け付けた緊急消防援助隊の応援のもとで要救護者の救出や不明者の捜索、多賀城の石油コンビナート火災の消火活動などの陣頭指揮を執った経験を振り返りました。
松島観光協会の志賀会長による講話
午後は松島湾内を一周する丸文松島汽船に乗船し、「語り部クルーズ」を体験取材しました。津波の勢いを減退させる消波ブロックの役割を果たし、一人も犠牲を出さなかった桂島など浦戸諸島の海域まで移動。後半は東松島市の自宅と両親を津波で失った横山さんの震災体験に耳を傾けました。あの日の朝、両親と口げんかをしたまま仕事に向かい、謝ることが永遠にできなくなったことを後悔していると話す横山さん。大切な人の存在は当たり前ではないことを胸に刻み、家族への感謝を忘れず毎日を過ごしてくださいね、と中学生記者に語りかけました。
ご自身の被災体験を語る横山純子さん
現在、中学生記者たちが取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の制作に奮闘中です!
現在、中学生記者たちが
取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の
制作に奮闘中です!