2018年02月26日 河北新報掲載 食べて、元気に、みやぎの復興。
豚肉の生産 大槻 孝雄さん(丸森町)
生産者と消費者の思いを結び、安全なおいしさを実現するみやぎ生協のブランド〝めぐみ野〟。なかでも、「めぐみ野豚(ポーク)」は、やわらかくジューシーな味わいで人気となっています。その生産の大部分を担うのが、豊かな森と美しい水源に恵まれた大槻ファームです。「地域の理解を得ながら、クリーンで豚にストレスを与えない生産環境を整えました」と代表の大槻孝雄さん。空調設備を完備したウインドレス豚舎では、国産米を配合した飼料と天然水が与えられ、生後3カ月以降の子豚に抗生物質や合成抗菌剤を使わないという、健康で安全な豚肉の高い品質を実現しています。さらに、「地域の農業文化を守る上でも、いつか飼料米のすべてを地元産で賄いたいですね」と展望も語ってくれました。
「強い思いをもってやり抜く信念の人」と、場長を務める息子の赳士(たけし)さんが評する大槻孝雄さん。
2002年に約180頭からスタートし、現在は約1万4000頭を生産する広大なファーム。
ブランドシールが目印。
お問い合わせ
有限会社 大槻ファーム
伊具郡丸森町字松1-34 TEL 0224-87-6125(FAX同)
◎みやぎ生協各店で販売。
銀鮭の養殖 鈴木真悟さん(女川町)
牡蠣養殖を始めた明治期に起源を持つ老舗、マルキン。そして、昭和52年に地元でいち早く銀鮭の養殖に着手した草分けとしても知られます。秋冬が旬の銀鮭を春以降も出荷できることで築地市場を中心に評判を呼び、近年では地域を潤す一大産業となるまでに。しかし、震災による被害は深刻で、マルキンも設備や加工場が全壊。常務の鈴木真悟さんは以前、食品全般を扱う企業の社員でしたが、家業再興のため女川に戻り、現在は、銀鮭漁師としてはもちろん、前職のスキルを生かした自社ブランドの販売・広報役としても忙しく奮闘中です。「生産から一次加工まで手がけることにより実現した国産銀鮭のおいしさを、より多くの方に知って欲しいですね」と、なおも尽きぬ情熱を感じさせてくれました。
波が穏やかで養殖に適した絶好の漁場である尾浦湾で、丹精を込めて生育。
30年以上のノウハウを生かした高品質が自慢の宮城県産養殖銀鮭「銀王」。
話題の水産チーム「フィッシャーマンジャパン」のメンバーとしても多彩に活躍する鈴木真悟さん。
お問い合わせ
株式会社マルキン
牡鹿郡女川町小乗浜字小乗1-22 TEL 0225-50-2688 FAX 0225-50-2687
◎宮城県内のスーパー、鮮魚店などで取り扱い。ホームページでも注文販売。
稲作と水耕栽培 黒澤光啓さん(栗原市)
栗駒山を背景にのどかな田園風景が広がる一迫地区で、一際目を引く太陽光利用型ハウス群。伊達藩献上米の歴史を誇る米作りとともに、大規模な水耕栽培によりサンチュやサラダ菜などの通年供給を実現しているのが、4戸の地元農家から始まった耕佑です。代表取締役の黒澤光啓さんは、「愛知県でレタスの水耕栽培を目にし、まさにこれだと思いました」と着手のきっかけを語ります。震災では、設備への直接被害のほか、電力ストップで出荷が滞る困難に遭いましたが、3カ月後には再開。昨年11月には、みやぎの復興現場訪問事業として村井知事が視察に訪れ、「サラダのおかわりを求められました」と笑顔。モットーを聞くと、「地域の農業を守るためにも、楽しく働ける環境づくりを目指しています」と教えてくれました。
地域農業の先達として知恵を駆使しながら、新たな領域への挑戦にも意欲的な黒澤光啓さん。
水耕栽培の葉物野菜は、どれもみずみずしくておいしいと評判。
ハウス内で作業を頑張っている元気な女性スタッフたちは、いつも笑顔が絶えません。
お問い合わせ
有限会社 耕佑
栗原市一迫柳目字平沢80 TEL 0228-52-2140 FAX 0228-52-2143
◎みやぎ生協各店や県内のスーパー、青果店などで販売。
牡蠣の養殖 後藤清広さん(南三陸町)
昔から養殖業が盛んな志津川湾。県漁協志津川支所戸倉出張所カキ部会の部会長を務める後藤清広さんも、戸倉漁港で牡蠣養殖に励む一人です。大津波で牡蠣棚や漁船のすべてを失いながらも、かろうじて残った種牡蠣で養殖を再開しましたが、「震災前のような過密な養殖をやめるべきだと、戸倉の漁師たちに持ちかけたんです」と後藤さん。生産量が以前の3分の1になることに不安や意見の衝突がありながらも、一年で十分に育った良質の牡蠣を出荷することに成功。2016年3月には、日本初の二枚貝養殖におけるASC(海洋管理協議会)国際認証を志津川支所戸倉出張所カキ部会で取得しました。「恵まれた漁場だからこそ、品質にこだわりたい。そして、若い世代もやりがいが持てる仕事にしていきたいですね」と話してくれました。
ふっくらと大きな身に、海の滋味をたっぷり含んだ一年子の牡蠣。
海の環境に負荷をかけず、できるだけ自然に近い状態で牡蠣を育てたいと語る後藤清広さん。
ASC国際認証の取得を契機に、事業モデルとして熱い注目を集め始めています。
みやぎの食のために、今できること。賛同企業の取り組み。
みやぎ生協
震災から7年、同じ東北の中でも被災のレベルは様々で、過疎化による農業・漁業の衰退や農作物の収量減少など一次産業が震災以前から抱える課題もあり、東北全体が活性化しないことには、被災地「だけ」の復興はありえません。「古今東北」の商品は被災地に限定せず、本当にいいものを作りたいと考えている生産者や、これからのモノづくりを背負う覚悟を持った若手生産者が作る、東北のポテンシャルが秘められた商品ばかりです。その想いを「良し」とするリピーターが増えることで、作り手の収入が安定し、雇用や収量の拡大に繋がります。古今東北はそんな作り手の皆さんを今後も応援していきます。
昨年9月に開催された「古今東北フェアinアエル」の模様
キリングループ
キリングループは、震災復興支援に継続的に取り組むべく3年間で約60億円を拠出することを決め、2011年7月から「復興応援 キリン絆プロジェクト」として、グループ各社が一体となった復興支援活動を進めてきました。 このプロジェクトでは「絆を育む」をテーマに、「地域食文化・食産業の復興支援」、「子どもの笑顔づくり支援」、「心と体の元気サポート」の3つの幹で一貫した活動を実施。当初想定していた3年間の活動期間は過ぎましたが、今後も活動を継続していきます。この活動を通じて産業が活性化し、将来に希望を持つ子どもたちが増えてコミュニティに元気が広がり、地域全体が活性化していくことで持続的な復興につながることを目指します。
首都圏飲食店様向け牡蠣産地ツアーの様子