2019年02月24日 河北新報掲載 食べて、元気に、みやぎの復興。
水産物の缶詰の製造 小山れえ子さん(南三陸町)
一年を通して豊富な水産物がもたらされる志津川漁港を目の前に、海の幸がぎっしり詰まった「魚市場キッチン」ブランドの缶詰を製造している小さな食品工場が。ここでは、宮城県漁協志津川支所の女性部が中心となって結成された「南三陸おふくろの味研究会」のメンバーが手作りの缶詰製造に勤しんでいます。2015年10月に工場が完成し、第一号の「タコの醤油麹煮」を皮切りに新商品をコンスタントにリリース。「毎年必ず1つ、新しいレシピを作っているんです」とは、会長の小山れえ子さん。南三陸の家庭の味をベースに、ちょっとオシャレで高級感ある商品がコンセプトだそうで、「志津川の素晴らしい海の恵みを、遠方の人にも気軽に楽しんでもらえれば何よりです」と、自信に満ちあふれた笑顔で教えてくれました。
左から中村悦子さん、小山れえ子会長、佐藤香代子さん。
タコやカキ、ホヤ、ムール貝などの大きな身がゴロゴロ入った缶詰は現在、12種類をラインアップ。
漁業や農業に携わる料理上手なお母さんたちが何度も試食を重ねながら手作りで製造。
お問い合わせ
南三陸おふくろの味研究会
TEL.0226-28-9401
◎南三陸さんさん商店街や仙台秋保醸造所(秋保ワイナリー)、ショッピングサイト「南三陸deお買い物」などで販売。
焼き菓子の製造 小泉大輔さん(山元町)
トレーラーハウスを改造した「カフェ地球村」の店内に漂う、焼き菓子とコーヒーの香り。山元町社会福祉協議会の就労支援により精神や知的障害のある人たちが手掛ける、看板商品のアップルパイが大人気です。こんがり焼けたパイ皮に包まれているのは、地元農家より提供されているそのまま食べても十分おいしい傷付きりんご。「地域の特産をより多くの人に知ってもらうきっかけづくりを、障害がある方々が担えたら」と小泉さん。多い日は、約400個焼き上げていますが、数十個まとめ買いをするファンもいるのであっという間に売り切れてしまうそうです。カフェには町内外から多くの人が訪れ、障害のある人との交流を育んでおり、「障害のあるなしに関わらず、同じ地元住民として支え合って暮らしていける地域づくりの一端を担えたらうれしいです」と展望を話してくれました。
シナモンを使わず、老若男女が親しめるおいしさを目指したアップルパイ。
無理な増産をせず、購入者の笑顔をモットーに丁寧な作業を心がけているメンバー。
佐賀県の精神科医が中心となって集めた寄付金で購入したトレーラーハウスをカフェ店舗に。
お問い合わせ
工房地球村(山元町共同作業所)
山元町真庭字名生東75-7 TEL.0223-37-0205 http://kobo-chikyumura.com/
◎カフェ地球村ややまもと夢いちごの郷、ローソン坂元駅前店などで販売。
鮭鱒製品の製造 髙橋正宜さん(南三陸町)
荒島が浮かぶ海を間近に望む工場で、鮭鱒の加工・出荷を行っている「行場商店」。盛んにトレーラーが行き交う現在の姿からは、震災の津波による甚大な被害は今や想像に難しくなりました。山手にあった団地冷蔵庫の無事を確認し、事業の復旧を決めたという社長の髙橋正宜さん。迅速な避難で命を守った社員の皆さんの奮闘もあり、2011年8月に操業を再開しています。そんな同社が、震災を乗り越え届け続けているのが、南三陸町を発祥とする養殖銀鮭と三陸産秋鮭のおいしさ。冷凍輸入される外国産とは違い、水揚げ当日に加工・出荷を行うので鮮度と味わいは抜群です。新鮮な身に温度の負荷をかけない丁寧な作業を心がけ、高い品質を保っています。髙橋さんは、「南三陸の復興へかける思いも感じてくれれば」と思いを語ってくれました。
養殖銀鮭のオリジナルブランド「銀乃すけ」にも注力している社長の髙橋さん。
衛生管理を徹底しながら、鮭鱒の下処理と製品加工を行っている第一・第二工場。
丁寧な下処理を施して冷蔵管理することで、年間を通しての安定供給が可能に。
お問い合わせ
株式会社 行場商店
南三陸町志津川字旭ヶ浦13 TEL.0226-46-3520 http://www.gyouba.co.jp/
◎みやぎ生協各店をはじめ、県内のスーパーや小売店などで販売。
食肉加工品の製造 及田賢治さん(東松島市)
厳選された食肉を自社で加工し、多彩な精肉商品を製造しているオイタミート。同社が精力的にブランド展開している「東松島ハム」ラインアップが、高い評価を受けています。そのルーツをさかのぼれば50年以上前。冷蔵庫の中に長期保存されているハムがいつまでも変色しないことに、幼少期の及田社長が感じた恐れや疑念が出発点となりました。そして、健全なハム・ソーセージを手掛けたいと抱き続けた思いは、社団法人全国食肉学校で専門知識と技術を身に付けた長女の幸栄(ゆきえ)さんとともに果たされます。東北産の豚肉を主な原料に、保存料などの添加物を制限し、独自配合のスパイスによる味付けで健康的なおいしさを実現。及田社長は、「無理な拡充で品質を落とすことなく、細く長く、誠実な製造に努めたい」と語ってくれました。
東松島ならではの海苔や牡蠣を配合したソーセージや牛たんつくね焼きなどバラエティー豊かな製品の数々。
地元の名産に何か一つ加えたかったと語る及田賢治社長。
平成24年にハム棟とスライス棟も増設し、「東松島ハム」商品の製造が加速。
みやぎの食のために、今できること。賛同企業の取り組み。
キリングループ
キリングループは、2011年7月からグループ各社が一体となって進める復興支援活動「キリン絆プロジェクト」に取り組んでいます。昨年9月にはプロジェクトの支援先が地域や分野を越えて一堂に会する「キリン絆 みちのくカンファレンス」を開催。プロジェクトの進捗共有や現状課題に対しての意見交換を通して、未来を語り合う場を創出しました。2019年も被災地の復興に貢献するとともに、「地域食文化・食産業の復興支援」と「心と体の元気サポート」を掲げ、キリングループの成長にもつながる被災地との「共有価値の創造」(CSV:Creating Shared Value)の実現に向け、引き続き地域の皆さまと共に“復興から未来へ”をテーマに活動を推進していきます。
販路拡大のための「カキバイヤーツアー」の様子
みやぎ生協・株式会社東北協同事業開発
東日本大震災から8年、インフラの回復は着実に進んできていますが、いまだ復興の見通しが立たない地域や、震災で負った重荷に耐え切れず経営破綻してしまう企業も見られます。思い切った業態変更で販路拡大に成功した会社もありますが、そう多くはありません。地域によって事情は異なりますが、さらなる支援を必要としている地域や会社もまだまだ多くあるのが現状です。だからこそ今、全国から寄せられる支援にだけ頼るのではなく、品質が良く継続的に扱ってもらえる商品づくりが必要だと考えます。みやぎ生協が推し進める食ブランド「古今東北」の取り組みは、全国の皆さまに喜んでいただける商品開発を通して、地域の経済活性化に貢献していきます。
東北の食の「これまで」と「これから」を紹介するブランド