河北新報特集紙面2024
2025年3月29日 河北新報掲載
震災伝承新聞完成レポート①中学生がつなぐ記憶と教訓
取材で得た学びの成果を共有
仙台市教委が推進する東日本大震災からの復興を学ぶ「故郷復興プロジェクト」の一環で、2月13日、仙台市立三条中で仙台七夕の竹飾りに使用する千羽鶴の作成と、中学生記者8人による震災伝承新聞の成果発表がオンラインで行われました。各教室では震災伝承新聞に目を通しながら、モニターを通した発表に耳を傾けました。「明日が来ることは当たり前ではない」と丸文松島汽船の語り部クルーズで話した横山純子さんのメッセージなど、取材を通して特に印象に残ったことや、平和な日常への感謝など、新たな気づきについて8人がそれぞれに発表しました。
取材の中で語られた不安や恐怖を、震災を知らない自分たちの言葉で伝えることの難しさと直面した今回の取材を機に、いつ起きるか分からない災害を自分ごとと考え、命を守る備えの必要性を訴えました。初めての取材で、被災の記憶を持ち合わせない自分が、相手から大切な核心を引き出す問いかけをどう発すればよいのか悩んだ一方で、実体験として震災を知らない次の世代に、どのように東日本大震災を伝えるか意識しながら取材に臨んだ経緯を説明。今回、取材を受けてくれた相手の思いを受け継ぎ、自分たちが伝える決意を語りました。
教室でモニターを通して中学生記者の発表を視聴

発表会参加者
圓谷 華悠さん(2年)
語り部クルーズ横山さんの震災当時の話を読み、改めて震災の悲惨さを思い知らされました。横山さんの「いつも通りの明日は来ないかもしれない」という言葉を心に留め、私も日々後悔のないように過ごしていきたいと思います。
今回参加した中学生記者全員の「声」
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石川 七翔さん(2年)
自分の行動見直す契機 - 震災を経験した方の体験談は重みがあり、写真や映像では分からない部分を知ることができました。語り部クルーズの横山純子さんの「明日はいつも通りには来ないかもしれない」という言葉は、自分の普段の行動を見直すきっかけになりました。今できることを先延ばしにすると、一生後悔するかもしれません。今回の取材の体験を、ずっと今後に生かしていくつもりです。
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庄子 杏奈さん(2年)
家族と防災を話し合う - いろいろな方々にお話を聞いて震災時の大変さや怖さを少しでも知ることができました。以前、親に少しだけ東日本大震災のことを聞いたのですが、そのときはイメージできませんでした。地震などの大きな災害に遭ったときの対策や被害軽減策について、家族で話し合う必要性を実感しました。自助だけでなく、共助についても積極的に取り組めたらいいと思いました。
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昆野 穂奈美さん(1年)
今後も震災学び続ける - 横山純子さんが言っていた「明日は普通に来ないかもしれない」という言葉を多くの人に伝えたいと強く思いました。私は、明日も明後日も普通に来ると思って生きてきました。今後、震災についてまた勉強する機会があるなら、もっと深く、広く震災のときに何があったのかを学びたいと思いました。
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米澤 名都さん(2年)
当たり前ではない毎日 - 震災を知らない人に伝承していくのはとても難しいことだと思います。震災の記憶がない私は、震災を自分事として捉えられませんでした。何気ない常が明日も明後日も続くのが、当たり前だと思っていました。震災を実際に経験した方々の不安や恐怖は、私は同じ状況に遭わない限り理解できないと思います。それでも今回学んだことを次の世代に伝えなければと思いました。
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鴇田 遥一さん(1年)
災害を自分事と考える - 震災について今まで他人事のように捉えていました。一番印象に残ったのは、桂島の住人の犠牲者がゼロだったことです。かつてのチリ地震津波の経験を踏まえ、津波が来ると予想して高いところに全員が避難したそうです。災害を自分事として捉えて行動することで、助かる命が増えることを知りました。伝えることの大切さ、自分事と捉える大切さを学びました。
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二本柳 昊さん(2年)
印象に残った津波の話 - 取材を通じて防災や減災、避難が重要であるかを再確認しました。特に津波についての話がとても印象的でした。松島町を襲った津波は湾内の島々が消波ブロックの役割を果たしたので、他地域より被害は少なかったのですが、それでも被災した人には深い心の傷が残りました。私たちのように震災の記憶がない世代に、取材で得たことを伝えたいと思いました。
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佐藤 レアさん(1年)
平和な日々に感謝する - 取材という初めての経験を通して多くのことを学び、大切なことを感じました。本音を引き出せる質問を考えるが大変でした。取材を受けてもらった方々からは津波の恐ろしさを聞くことができ、「自分も震災のことを後世に伝えなければいけない」と改めて思いました。今回の経験を踏まえ、平和な日々は当たり前だと思わず、感謝の気持ちを持って過ごしていきたいです。
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新井 悠斗さん(1年)
語り継ぐ人増やしたい - 「明日が来るのは当たり前じゃない」という話が印象に残りました。大切な人とけんかしたまま会えなくなるかもしれません。改めて何事もなく幸せに過ごせている日々の大切さを知りました。震災に初めてきちんと向き合えたと思います。今回の取材で得たことをずっと忘れず、自分事としてとらえて後世に語り継ぎたいし、語り継ぐ人が増えればいいと願っています。
「震災伝承新聞」は、宮城県内184の中学校へ配布したほか、石川県輪島市立門前中、愛媛県今治市立近見中、兵庫県西宮市立浜脇中などで教材として活用されました。各地の震災伝承施設、仙台市図書館、そなエリア東京、宮城県大阪事務所などでも配布しています。
[お問い合わせ]
今できることプロジェクト事務局(河北新報社営業部)
tel 022-211-1318(平日10:00〜17:00)
中学生記者
石川 七翔さん(2年)
今回の活動を通して、自分自身や身の回りの防災対策を見直すきっかけとなりました。リモートでの発表でしたが、真剣に集中して聞いてくれた人が多かったと思います。また、学校全体での防災対策、意識を十分に高めることができたと感じました。