河北新報特集紙面2022
2023年3月30日 河北新報掲載
復興の息吹を感じた中学生記者たちが伝承のバトンを次世代へ。
仙台市立八乙女中学校
八乙女中1年生の9人は、昨年9月17日に亘理町立荒浜中学校を訪問。NPO法人海族DMCの太見洋介理事長を先導役に、防災と観光の情報を盛り込んだ「あらはマップ」作成に携わった生徒会メンバーを取材しました。「あらはま海苔(のり)合同会社」代表、菊地幹彦さんには海苔養殖復活までの道のりを聞き取り。「わたり温泉 鳥の海」では、半田英明支配人と寒河江佑介さんから温泉施設を核とする地域再生への展望に耳を傾けました。
伝承新聞発行後の2月17日に発表会を開催。中学生記者9人は、体育館のステージに立ち、スクリーンにスライド資料を投影しながらその成果と感想を語りました。1年生は体育館で直接聴講。2・3年生は各教室でリモート視聴しました。発表を終えた壇上の中学生記者に会場から大きな拍手が送られ、その様子を目の当たりにした9人は満ち足りた表情を浮かべていました。
「あらはマップ」を手に説明する荒浜中の生徒
海苔を加工する工程も見学
やや緊張した面持ちで発表に臨んだ中学生記者
3年1組の教室でリモート視聴
- 中学生記者
髙崎 開さん(1年) - この取材でさまざまな工夫をした防災への取り組みや被災したことで生まれた目標、復興してもまだ課題があることなどを学びました。そして学んだことを周りに伝え、まだある課題を自分たちが解決することが取材をした自分たちの役割だと思っています。
- 発表会参加者
北川 蒼さん(2年) - 震災によって失われた物や形をそのままにしておくのではなく、次世代に伝え、復興のために多様な工夫をしていることに感動しました。そうした人たちの工夫を自分の周囲に伝えたり、実際に訪れたりすることが僕たちの役目なのだと実感しました。
多賀城市立東豊中学校
昨年10月14日、東豊中の2年生9人は、石巻市のゲストハウス「OGAWA(オガワ)」で、巻組(まきぐみ)が手がける空き家再活用の取り組みについて取材しました。「石巻市震災遺構門脇小学校」も見学し、この施設が伝える教訓や地域の人々が抱く思いを聞いた後、女川町のダイビングサービス「ハイブリッジ」へ。代表の髙橋正祥さんと、妻の捜索をきっかけに潜水士資格を取得した高松康雄さんにも詳しく話を聞きました。
成果の発表会は3月13日、5時間目の授業を利用して開催。体育館に1、2年生全員が集まり、中学生記者の話に耳を傾けました。壇上のスクリーンには、取材の模様や記事制作に関わる写真などが映し出され、実際に現地へ足を運ぶことで得られた学びや率直な感想などを伝えました。被災の記憶をほぼ持っていない会場の中学生たちはみな真剣な眼差しで発表会に臨み、次の世代へ語り継ぐ伝承の大切さについて思いを強めました。
館長が津波火災と垂直避難について解説
髙橋さんと高松さんを囲んでの取材
記事の製作過程で感じたことを発表
新聞づくりで工夫した点を語る中学生記者
- 中学生記者
五十嵐 春也さん(2年) - 取材や新聞の編集と、今日の発表を通して感じたことは、僕たちは皆それぞれ復興への思いと新たな命を守ることへの思いを持っているということです。そして、そのようなことを感じた今、災害に強い地域を作り上げるのは僕たち若い世代だと強く思います。
- 発表会参加者
菅井 結菜さん(2年) - 東豊中の記者9人が実際に被災地に行き、震災を経験した方と近い目線で取材をしたことで、12年前のあの日何があったのかを知ることができました。上の世代から聞いたことを、次の世代に伝えること。これが私たちの使命だと思っています。
名取市立閖上小中学校
自宅が被災した数人を含む閖上小中学校の7・8年生(中学1・2年に相当)の8人は昨年10月15日、東松島市での取材に参加。現在、語り部として活動している東北学院大4年の雁部那由多さんが同行し、大曲小で被災体験を語ってもらいました。JR陸前小野駅前の交流施設「空の駅」では、保存性が高く、災害時でもおいしく食事が取れるレトルト食品の有効性を学び、ソックスモンキー「おのくん」の体験制作に挑戦しました。
閖上小中学校では、2月27日・28日・3月1日の3日間、7〜9年生向けにリモートによる発表会を実施。初日は毎月11日に実施している閖上小中学校における防災学習について、2日目は東松島市のソックスモンキー「おのくん」について発表しました。最終日は、大曲小学校5年在学時の被災体験を語ってくれた雁部那由多さんについて、それぞれの取材チームが取材成果をレポートしました。
雁部さんの体験談を聞く中学生
完成したおのくんを手に空の駅の皆さんと
放送室からリモート形式で発表
教室で発表を視聴する9年生
- 中学生記者
鈴木 くるみさん(8年) - 震災に対する人々の思いを生徒の皆さんに伝えることができるよう、構成を工夫して準備し、発表を行いました。今回の取材は、復興に向かう人々のつながりや命の尊さについて改めて考え直すことができ、貴重な機会となりました。
- 発表会参加者
小齋 莉子さん(9年) - 発表を聞き、震災当時の大変さや恐ろしさを改めて実感しました。また、災害が発生した時には中学生の力でも人を守り、助けることができるということを学びました。これから私自身も守られる側ではなく守る側に立ち、多くの人を安心させたいです。
「震災伝承新聞」は、宮城県内186の中学校へ配布したほか、愛媛県今治市の菊間中学校と兵庫県西宮市の浜脇中学校で教材として活用されました。
東北の震災伝承施設、宮城県外の災害に関する研究を行う大学や団体、東京都・池袋「宮城ふるさとプラザ」、宮城県大阪事務所などにも配布しました。
震災伝承新聞の送付をご希望の学校、団体、施設等は事務局までお問い合わせください。
[お問い合わせ]
今できることプロジェクト事務局(河北新報社営業部)
tel 022-211-1318(平日10:00〜17:00)
▼今回参加した中学生記者全員の「声」はこちらからご覧いただけます。