河北新報特集紙面2016

2016年11月30日 河北新報掲載 ともに手をたずさえ 新たな魅力あるまちづくりへ

今年4月に発生した熊本地震で被災した熊本県内の商店街。
建物の倒壊や観光客減少など甚大なダメージを受けましたが、
地元の人たちがともに手を取り合い、かつて以上の賑わいを取り戻そうとしています。
そんな商店街の再興を支える3人に、
新たな港町の活気を生みだそうと力強く前進する女川町にお越しいただきました。

約5年で街開きに至った「シーパルピア女川」など、
目を見張るスピードで復興を進める女川町。
新しいまちづくりに関わったキーパーソンたちとともに、
女川と熊本の交流の可能性を探りました。

震災に立ち向かい それぞれが学びながら 連携した女川町の歩み
 11月21日、熊本県熊本市から地元商店街復興に携わる若手3人が女川町を訪問。シーパルピア女川の中心にある「女川町まちなか交流館」で、女川町商工会の青山貴博さんと、復幸まちづくり女川合同会社の阿部喜英さんと対面しました。まずは、青山さんが、地域振興を支える商工会の役割と震災発生から現在に至るまでの復興の歩み、業種を超えて連携を生んだ女川町復興連絡協議会の功績について説明。最後に、青山さんは「新しいまちづくりには、将来、子どもたちに引き継げる街というビジョンを掲げた」と話しました。
 阿部喜英さんは、公的補助に頼らない地方創生を実践した岩手県紫波町「オガールプロジェクト」に学びを得て、公民連携事業機構が主催した勉強会「復興まちづくりブートキャンプ」に参加した経緯を紹介。そして、「女川水産業体験館あがいんステーション」を拠点に展開している地元水産加工品ブランド「あがいん おながわ」の展望についても語ってくれました。


真剣な眼差しで青山貴博さんの話に耳を傾ける熊本メンバー


阿部喜英さんは若い世代が主役となったまちづくりを紹介

新たな取り組みのため ともに手を取り合う 仲間づくりを提案
 マルサンの高橋敏浩さんと、みなとまちセラミカ工房の阿部鳴美さんも合流し、今後の交流を考えるトークセッションがスタート。まずは、熊本市下通新天街商店街振興組合の桑本知明さんから、熊本地震の影響、各商店街の特徴や現在取り組んでいる施策などについて教えてもらいました。そして、「ハード面の復旧とともに、集客の話題づくりや魅力づくりが重要だと考えています」と、上通1・2丁目商店街振興組合の森岡大志さん。イベント運営などにも尽力している高橋さんの「新しい試みに挑戦する時、女川町長も親身になって相談にのってくれるような関係者の距離感や、若い人たちの連携力が女川の強みになっています。そんなつながりを作ってみては」という提案に、熊本市新市街商店街振興組合の安田征司さんはうなずきながらも、「振興組合の年代層が幅広く、意思統一の難しさを感じています」と答えました。みなとまちセラミカ工房の阿部さんは「私も、商工会女性部メンバーのサポートで事業に踏み出すことができました。同じ思いを持ってともに前へ進む仲間づくりは大事だと思いますよ」とエールを送りました。
 翌日、熊本市の3人は「きぼうのかね商店街」を視察。女川町観光協会事務局長の遠藤琢磨さんのガイドで、木造とプレハブの店舗が並ぶ街並みを歩きました。現在もこの商店街で営業を続けている「岡八百屋」では、ご主人が話す震災当時の話にみな、真剣な面持ちに。その後、「蒲鉾本舗 髙政」では、女川の海の幸を使った笹蒲鉾の味わいを楽しみました。桑本さんは「新しい交流が生まれることに期待しながら、熊本でお待ちしています」と笑顔。そして、一行は女川町を後にしました。


双方で意見を出し合って盛り上がったトークセッション


復興の足掛かりとなった「きぼうのかね商店街」を散策

女川町商工会 副参事 経営指導員
青山貴博さん
 女川町復興連絡協議会の設立に関わり、震災発生から3カ月後に仮設商店街「コンテナ村商店街」の設立に大きく関与し、「きぼうのかね商店街」を立ち上げるなど、迅速かつ柔軟な復興活動を推進している重要人物です。

熊本市下通新天街商店街 振興組合
桑本知明さん
 保育園の園長として小規模保育事業を運営しながら、下通商店街の入口に当たる南九州随一の商店街を支える一人。震災直後、東京に家族を避難させながら、人通りの無くなった商店街の復旧に尽力しました。
復幸まちづくり 女川合同会社
代表社員
阿部喜英さん
 その活躍は、TVドラマにもなった「河北新報のいちばん長い日」で知られる梅丸新聞店の代表取締役。復幸まちづくり女川合同会社では、水産業を中心に置いた女川ブランドの構築に情熱を注いでいます。

上通1・2丁目商店街振興組合
専務理事
森岡大志さん
 城下町の名残が見られる上通商店街で、地元に密着した不動産会社に勤務。「がんばるばい!上通チャリティ演劇まつり」などさまざまなイベントに関わりながら、商店街の賑わい復活を目指しています。

NPO法人 みなとまちセラミカ工房
代表
阿部鳴美さん
 女川に再び豊かな彩りを取り戻したいと考え、スペインタイルの工房をオープン。現在、街中のいたるところにタイルが見られるまでに。受注製作だけでなく、各地でワークショップなども行っています。

熊本市新市街商店街振興組合
青年会 理事
安田征司さん
 東京で教員の経験を経て、地元の熊本市にUターン。不動産会社に勤務しながら、振興組合青年部の最年少理事として活躍中です。日本一幅の広いアーケードを盛り上げるべく、若い力を発揮しています。

有限会社マルサン 代表取締役
高橋敏浩さん
 シーパルピア女川で衣類・雑貨店「MARUSAN」を営み、独自にデザインしたTシャツなどが話題に。また、女川町商工会理事・青年部長として盆踊りなどを開催し、地域全体の盛り上げ役として活躍しています。
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