2020年度河北新報特集紙面

2021年4月14日 願いを受け継ぎ、その先へ。

願いを受け継ぎ、その先へ。

 このプロジェクトが走り出して9年目を数え、
2021年3月11日で震災の発生から10年の歳月が流れました。
今年度は、これまでを振り返りながら新たな段階へ進むため
先を見据えた指針を定め、
活動に取り組んできました。
2020年度に掲げたテーマは4つ。
河北新報の読者、賛同企業の方々、
たくさんの一般参加者とともに体験を通して学び、
得られた多くの成果を報告します。

プロジェクトは新たな段階を迎えます。
 2020年度におけるプロジェクトの活動はいったん完了となりますが、2021年度も今私たちにできることを実施しプロジェクトを継続するため、新たな支援や体験ツールなどを企画中です。10年の月日の経過を踏まえ、その先にある未来を目指すために何ができるかをみなさまと一緒に考え、その思いや学びを共有しながら、より人の輪を広げていきたいと考えています。
 2021年度活動のスタートを切る際には、また、河北新報紙面とホームページ、フェイスブックでお知らせいたします。リアルタイムの情報は、フェイスブックの記事でお伝えしていきますので、引き続きご覧いただけますようお願いいたします。
七ヶ浜町の海岸支援

あの日からの10年、ここからの10年七ヶ浜の海で感じて考えるプロジェクト

七ヶ浜と今できることプロジェクトによるコラボレーション企画

 七ヶ浜町の海水浴場で海浜清掃や数々のイベント運営などに取り組んできたSEVEN BEACH PROJECT(セブンビーチプロジェクト)。東日本大震災から10年目に向けて、〝あの日からの10年、ここからの10年〟というテーマを掲げた企画「七ヶ浜の海で感じて考えるプロジェクト」を立ち上げました。今できることプロジェクトはこの理念に共鳴し、この取り組みとコラボレーション。昨年10月から3回ビーチクリーンを共催し、さらに2〜3月の期間、展示企画や動画配信などを実施しました。

  • 七ヶ浜の海岸支援
    同性寺の渡邉俊邦和尚さんらによる
    供養式典「祈望×禅法要」
  • 七ヶ浜の海岸支援
    たくさんの参加者が集まった昨年10月のビーチクリーン

ビーチクリーンやパネル展示動画配信など多彩に展開

 月1回のビーチクリーン、取材企画「七ヶ浜10人インタビュー」を経て、2021年2月20日に七ヶ浜国際村でオープニングオンラインイベント「感じて考える〝うみ・ひと・まち:みらい〟」を実施しました。この日は、七ヶ浜町向洋中学校の卒業生で結成されたボランティア団体「きずなFプロジェクト」の活動内容と震災伝承の紙芝居の発表、地元の関係者や活動メンバーによる座談会をオンライン配信。そして、〝海と自分〟をテーマに5色の旗にシンボルマークを描き、浜風になびかせ海への想いを世界に届けるプロジェクト「ハマひら」のオンラインワークショップを行いました。
 同時に、七ヶ浜町国際村の館内では、セブンビーチプロジェクトがこれまで共同制作してきたアート作品の数々、七ヶ浜10人インタビューパネルなどの展示もスタート。3月28日までの期間、多くの来場者が足を運び、この取り組みへの関心を高めました。

  • 七ヶ浜の海岸支援
    菖蒲田浜に展示をする「ハマひら」を作成
  • 七ヶ浜の海岸支援
    ハマひら、光と海2021の写真を菖蒲田浜で野外展示

七ヶ浜の海岸支援
SEVEN BEACH PROJECT代表の久保田靖朗さん

七ヶ浜の海と向き合いながらこの先の10年を歩むために

 菖蒲田浜では、「感じて考えるビーチクリーン」と題し、町内外の人が参加できる海浜清掃を毎週末開催。当プロジェクト賛同企業のJT東北支社からは清掃用具の提供があり、早朝ながら、参加者はみな楽しみながらゴミ拾いに取り組みました。2月28日には、復興を願うモニュメント「祈望の鐘」を砂浜に設置し、セレモニーとして地域の僧侶による「般若心経」の奉納を行いました。この日以降も、毎日ビーチクリーンや防潮堤の上で手をつなぎ1分間黙祷する「防潮堤ウェーブ」などを予定していましたが、宮城県の新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言を受け、野外活動を中止。それでも、3月28日まで、SNSで募集した海の写真を紹介する「光と海2021」と「ハマひら」の野外展示まで活動を完遂し、この企画を通じて得られた誓いと願いを、たくさんの人に発信することができました。
 一連の活動を振り返り、セブンビーチプロジェクト代表の久保田靖朗さんは「今回、今できることプロジェクトと一緒に取り組むことによって、本当にたくさんの方々と対話を繰り返したことで新たな決意が芽ばえ、この地域で果たすべき責任を強く再確認する機会になりました。感じて、考えたことで見えてきた海と人との関係性の再構築を進めながら、今後も地域の歴史や土地の力にも目を向け、七ヶ浜の文化をより厚みあるものにしていく一助になれればと思っています」と語ってくれました。

七ヶ浜の海岸支援
オープニングオンラインイベントを終えて記念撮影

SEVEN BEACH PROJECT
https://www.sevenbeachproject.com/

こども伝承啓発支援

中学生42人〝記者〟となって被災地へ復興の今を伝える震災伝承新聞発行

中学生記者たちが被災地を訪ね命を守る教訓と決意を記事に

 仙台市立五橋中学校・東北学院中学校・宮城学院中学校の生徒42人が、記憶と教訓の若き担い手となるべく復興の現場を取材し、記事執筆に挑戦。自らの思いを込めながら「震災伝承新聞」を作り上げ、河北新報別刷紙面として2月11日に発行しました。その後、各校で発表会も行われ、活動の振り返りも行っています。
「震災伝承新聞」は、宮城県内約160の中学校へ配布したほか、 東北の震災伝承施設、宮城県外の災害に関する研究を行う大学や団体、東京都・池袋「宮城ふるさとプラザ」、兵庫県伊丹市の全中学生などにも配布しました。

七ヶ浜の海岸支援
大川小で「大川伝承の会」共同代表の佐藤敏郎さんから話を聞く五橋中の生徒たち

生徒たちの取材に同行

東北学院中学校 渡邉 優先生

こども伝承啓発支援

 自分たちが見て感じたこと、考えたことをきちんとまとめて記事にし、発表会で堂々と発言している姿を見て、立派だなと感心するばかりでした。取材中は、大人には無い視点で質問をしていて、全身で受け止めながら一生懸命耳を傾けているという印象を受け、この企画に参加できて良かったと思いました。私も震災で家を失った経験を生徒たちに話す機会がありますが、震災を知ることが子どもたちの成長につながればと願っています。

震災伝承新聞を読んだ方々の感想

仙台市立第一中学校3年 佐藤 撫子さん

こども伝承啓発支援

 特集紙面にあるような語り部の皆さんが経験した「当たり前の日常が一瞬で壊れる」ということが私自身に起きたらと考えると、なかなか受け入れることはできないと思います。しかし、そのような状況で救えなかった命を「仕方ない」で片付けるのではなく、これからに生かそうと力強く歩んでいるということがとても印象的でした。今の私にできることを考えながら生活し、命を大切にしていきたいです。

仙台大学3年 宍戸 翔紀さん

こども伝承啓発支援

 震災を知らない世代が増えてくる中、実際に被災地に足を運びいろいろな方に話を聞くのはとても大事だと感じました。また、実際に行った人がたくさんの人に共有することによって他の人が震災について「知りたい」と思うきっかけを作るのも大切だと思います。
 私は宮城での就職を目指し就活中です。自分にできることは何かを考え、被災地の方を元気づけられるような活動をしていきたいと思います。

せんだい3・11メモリアル交流館 飯川 晃さん

こども伝承啓発支援

 中学生の取り組みを見て、学校教育に守られている環境と違い、子どもたちも「自助」の必要性を感じていると思いました。交流館では、生き物探しツアーや屋上でのお月見などを通して子どもたちに自然と触れ合い、楽しんでもらう機会を作るよう取り組んでいます。この積み重ねや今回のような現地視察などで体験的に理解し、いつか起きる天災のための知恵にしてもらいたいです。

兵庫県伊丹市立南中学校3年 馬瀬 壌さん

こども伝承啓発支援

 東日本大震災が起きたときのことをテレビなどで知っていたつもりだったけれど、実際に現地を見て、話を聞くことがとても大事だと思いました。被災地の人たちにはどんどん情報を発信していってほしいと思います。僕は、津波を静めるという説がある音響衝撃波の研究に興味があり、今後の進展に期待をしています。

兵庫県伊丹市立南中学校3年 布田 美咲さん

こども伝承啓発支援

 家族・親戚や友人など身近な方が犠牲になったかもしれない地元の中学生たちが、しっかりと取材していることがとても立派だと思いました。伊丹南中では地震を想定した避難訓練を行っています。大きな地震が来たら、この訓練を忘れずに、冷静に行動することが大事だと思います。集団で行動し、お互いを助け合うことを心掛けていきます。

※学年・所属は2021年3月現在

こども伝承啓発支援

中学生たちが作り上げた「震災伝承新聞」は、
こちらからご覧いただけます。

仙台市荒浜地区の再生支援

荒浜の地で育まれた恵みを青空の下でのびのびと体感

荒浜が秘める地の力を感じ「めぐみ」を得た感動と笑顔を共有

 2020年11月14日、仙台市荒浜地区の震災被害と再生、実りの豊かさを知るバスツアーを開催しました。この地の豊かな地域資源を再確認し、実体験を通じて〝生きる力〟について考える活動を展開している「荒浜のめぐみキッチン」のメンバーも同行。約120人の応募から選ばれた35人が参加しました。
 震災遺構の仙台市立荒浜小学校では、施設ガイドの高山智行さんと貴田恵さんの説明で校舎を見学。その後、深沼海岸へ向かい、キャンドルホルダーを作るための材料を集める〝ビーチコーミング〟とゴミ拾いを行いました。荒浜のめぐみキッチンの拠点となっている田園に囲まれた荒浜ベースでは、地元の農産物を味わえるランチタイムを過ごし、この地に息づく「めぐみ」を味覚で体感することができました。
 共同代表である小山田陽さんは「皆さんには、荒浜が気軽に来られる場所だという印象を持ってもらえてうれしいです。仙台市東部沿岸部の集団移転跡地利活用事業に採択され、深沼エリアの活動拠点を得ることができました。ここは、昔から半農半漁の営みが息づく土地柄。今後は、海をテーマにした活動も充実させていきたいと思っています」と展望を教えてくれました。

  • 仙台市荒浜地区の再生支援
    深沼海岸で拾った貝殻で作った
    キャンドルホルダー
  • 仙台市荒浜地区の再生支援
    土鍋で炊いたご飯やネギ味噌
    などを味わいました
  • 仙台市荒浜地区の再生支援
    震災遺構・仙台市立荒浜小学校を見学

仙台市荒浜地区の再生支援
参加者と荒浜のめぐみキッチンメンバーで記念撮影

荒浜のめぐみキッチン
https://arahamano-megumi.kitchen/

松島町の魅力発信と観光支援

荒浜の地で育まれた恵みを青空の下でのびのびと体感

日本三景松島の魅力を五感で体感

 2020年12月12日、約400人の応募から選ばれた37人が、震災後、松島町の新たな名物づくりに挑戦している松島町内陸北部の竹谷地区の「たけのこ工房 吉左衛門」を訪ね、うっそうと繁るモウソウチクの林の整備をお手伝いしました。昼食を取った「牛たん炭焼 利久 松島五大堂店」では、タケノコ料理のフルコースを堪能。参加者は、吉左衛門のタケノコのおいしさを実感することができました。
 松島町の名刹「瑞巌寺」にも足を運び、松島観光協会の志賀寧会長をガイドに、瑞巌寺の参道から国宝の庫裏(くり)、本堂までじっくりと見学。最後は、普段は入ることができない大書院で志賀会長の講話を聞きました。
 吉左衛門の代表、丹野隆子さんは「たくさんの方をお迎えしたのが初めての経験だったので当初は不安もありましたが、松島産のタケノコに興味を持っていただき、この町の魅力もアピールできる機会となってうれしいです。今年の収穫シーズンが近づいてきていますが、前年より収穫量を増やし、より多くの方に吉左衛門のタケノコを手に取っていただけるよう頑張ります」と意気込みも示してくれました。

  • 松島町の魅力発信と観光支援
    参加者の前で講話をする
    志賀会長
  • 松島町の魅力発信と観光支援
    丹野隆子さん
  • 松島町の魅力発信と観光支援
    竹の根元にまんべんなく
    米ぬかをまく参加者

松島町の魅力発信と観光支援
たけのこ工房吉左衛門で作業後に記念撮影

今回の「今できること」の紙面をPDFで見る