河北新報特集紙面2020

2020年11月30日 中学生42人”記者”となって被災地へ

中学生42人”記者”となって被災地へ

事前オリエンテーション
自分で見て、感じた言葉で同世代に伝える記事を書くために。

 東日本大震災発生時はまだ幼かったため、被災の記憶がおぼろげな中学生たちが、記憶と教訓の若き担い手となるべく復興の現場を取材し、記事執筆に挑戦。仙台市立五橋中学校・東北学院中学校・宮城学院中学校の生徒42人が参加してくれました。
 事前に震災による被害状況や訪問先の情報などを予習し、取材方法などを習得するオリエンテーションを各校で開催。記者経験のあるプロジェクトメンバーがそれぞれの学校を訪ね、インタビューのコツや記事の書き方などを詳しくレクチャーしました。

  • 五橋中学校
    五橋中学校
  • 宮城学院中学校
    宮城学院中学校
  • 東北学院中学校
    東北学院中学校

現地視察

五橋中学校→石巻市

 10月24日に石巻市を訪れたのは、五橋中の10人。最初に石巻市大川小学校を訪問し、大川伝承の会の共同代表・佐藤敏郎さんのメッセージに耳をかたむけました。
 次に向かったのは「雄勝ローズファクトリーガーデン」。ここでは、一般社団法人雄勝花物語の共同代表・徳水博志さんらに話を聞き、緑あふれるガーデン内を散策しました。
 最後は、北上町十三浜の漁業生産組合 浜人(はまんと)漁師の阿部勝太さんから、漁業の仕組みや海洋環境の問題について分かりやすく説明を受け、その後、作業場で塩蔵ワカメや結び昆布などの袋詰めも体験しました。

  • 石巻市大川小学校で佐藤さんの震災語り
    石巻市大川小学校で佐藤さんの震災語り
  • 雄勝ローズファクトリーガーデン設立について語る徳水さん
    雄勝ローズファクトリーガーデン設立について
    語る徳水さん
  • 港を背景に漁業の未来について語る阿部さん
    港を背景に漁業の未来について語る阿部さん
  • 袋詰めした塩蔵ワカメや結び昆布はみんなのお土産に
    袋詰めした塩蔵ワカメや結び昆布は
    みんなのお土産に

小山田 陽輝さん

小山田 陽輝さん(1年)
 佐藤さんの「防災はハッピーエンドのためにある」という言葉に、無事避難して全員がよかったねと笑顔になれるよう日々備えなければならないのだと感じました。

松井 奏絵さん

松井 奏絵さん(1年)
 お話を聞いた3人の方は、言い方は違っていても、震災からの復興を目指していることは変わりません。私たちも自分でできることを見つけ、復興に少しでも役立っていきたいです。

東北学院中学校→南三陸町

 10月31日、南三陸町で取材を行ったのは東北学院中の15人。現在は閉校してしまった戸倉中学校へ向かい、当時2年生だった三浦貴裕さんに話を聞きました。
 次に向かったのは、志津川湾を望む高台にある「海の見える命の森」。海の見える命の森実行委員会副実行委員長・阿部寛行さんと語り部の後藤一磨さんに話を聞き、中学生たちもカエデの苗木を植樹。さらに、石窯でピザ作りにも挑戦しました。
 最後に、入谷地区の宿泊研修施設「いりやど」を訪問。震災時、南三陸町入谷消防団の副分団長として救援活動に従事した阿部博之さんにもインタビューを行いました。

  • 戸倉中学校敷地内を見学しながら三浦さんにインタビュー取材
    戸倉中学校敷地内を見学しながら
    三浦さんにインタビュー取材
  • 今後の「海の見える命の森」の未来について語る阿部さん
    今後の「海の見える命の森」の未来について
    語る阿部さん
  • 植樹した場所に日付と学校名を入れた記念プレートも設置
    植樹した場所に日付と学校名を入れた
    記念プレートも設置
  • 防災に関する日頃の備えの大切さを語る阿部さん
    防災に関する日頃の備えの大切さを語る阿部さん

庄司 宏知さん

庄司 宏知さん(1年)
 震災が起きたとき3歳だった僕は、当時のことをよく覚えていませんが、実際にどんなことがあったか、また、救助の苦労などを、今回の視察を通して知ることができました。

堀内 千滉さん

堀内 千滉さん(3年)
 数年前に見た南三陸町の風景と違っていて驚きました。三浦さんの「色々なことに挑戦していく町の景色が変わっていくことが楽しみ」というお話に、とても共感しました。

宮城学院中学校→名取市

 宮城学院中の17人は10月17日、名取市閖上(ゆりあげ)地区へ。伝承施設「閖上の記憶」を訪ね、閖上中学校遺族会代表で語り部でもある丹野祐子さんに取材をしました。
 昼食は、昨年オープンした商業施設「かわまちてらす閖上」で「ももや」のカツ丼を堪能。震災以前、地元で親しまれていた味で、そのレシピ復活を支えた一人である飲食チェーン「飛梅」の社長・松野水緒さんからエピソードも聞きました。
 笹かまぼこの老舗「ささ圭」では、専務取締役の佐々木靖子さん、常務の堯(ぎょう)さんから、津波被害と事業再開までの道のりを聞いたほか、笹かまぼこの手焼きにも挑戦しました。

  • 閖上地区の津波被害について説明する丹野さん
    閖上地区の津波被害について説明する丹野さん
  • 慰霊碑に刻まれた閖上中学校生の名前を確認
    慰霊碑に刻まれた閖上中学校生の名前を確認
  • ランチタイムで味わった「ももや」のカツ丼
    ランチタイムで味わった「ももや」のカツ丼
  • 事業再開までの道のりを語るささ圭の佐々木靖子さん
    事業再開までの道のりを語る
    ささ圭の佐々木靖子さん

柏倉 綾乃さん

柏倉 彩乃さん(1年)
 丹野さんの「閖上は遠浅の海なので津波が来ない。根拠のない『大丈夫』という思いがあった」という言葉が心に残っています。この貴重な教えを後世に伝える架け橋になりたいと思います。

秦 くるみさん

秦 くるみさん(2年)
 「生きる」ということが何よりも大切だということを感じました。つらい経験をしたにもかかわらず、私たちに向き合いお話しいただいた内容を、忘れずに語り継いでいきたいです。

現在、中学生記者たちが取材を振り返りながら、
2月発行予定の特集紙面の制作に奮闘中です!

今回の「今できること」の紙面をPDFで見る