2014年3月5日掲載 河北新報掲載 被災地を訪ねる観光型支援《バスツアー》レポート
訪れて、感じて、確かめることが第1歩。
震災からまもなく3年、という時期を迎えています。震災直後に求められていた支援の仕方は、変わってきています。少し時間が経った今、求められている支援のあり方もあるはずです。「今できることプロジェクト」では、今何が必要なのか、今私たちに何ができるのか、読者の皆さん、賛同企業の皆さんとともに考え、いっしょに行動するという活動を続けてきました。
今回実施したのは「被災地を訪ねる観光型支援」。実際に被災地を訪ね、現地を自分の目で確かめ、現地の人に直接話を聞いて、被災地の現状や取り組み、どんなことが課題になっているのか、などを把握しよう、そして学んだことをより多くの人に伝えてみようという活動です。
バスツアーの実施に先立ち、紙上で「被災地に来てほしい、知ってほしい」という団体を募集し、多数の応募がありました。事務局において決定させていただいたのが、今回の訪問先「金華山」です。
青く輝く海。すばらしい景観の金華山。
さて今回訪れた金華山は、震災前は年間6〜7万人が訪れる観光地でした。震災により建物と参道のがけ崩れなど大きな被害を受けました。震災当日、金華山は鮎川側と女川側からの津波が激突し、とてつもなく巨大な津波となって押し寄せたと、権禰宜日野さんは説明していました。定期船の運航中止や減便もあり、観光客は激減しました。
参道もまだ修復途中で歩きにくい状態でしたが、被災当時の写真を見ると、すさまじい崩れ方だったことがわかります。よくここまで復旧したと思います。バスツアーの日、南三陸国定公園の碑が建つ参道の中腹からは、青く輝く海。ほんとうに穏やかな国定公園の眺めでした。
今回は金華山を訪れましたが、ぜひ被災地を訪ねてみましょう。漠然とイメージしている被災地のほんとうの姿を、実際に出かけて自分の目で確かめてみる。現地の方の話を聞いてみる。そして身近な人に伝えましょう、震災のことが風化してしまわないように。被災地を訪ねることで、地元の人とつながることができます。
紙面下欄では、応募いただいた団体・観光地の中から一部を紹介しました。こちらにも、ぜひ足を運んでみてください。
語り部の使命感に感銘 参加型支援の大切さ考える
仙台市泉区
松田万里さん(40)
ツアーでは、震災で被害に遭った方や語り部の方からさまざまな話を伺いました。女川から金華山に向かうフェリーを運航する船会社さんの、地元への熱い思い。震源地に一番近かった金華山の、被害の様子や厳しい現状…。震災の経験や復興への道のりを伝えたいと強く願っているみなさんの思いを知り、被災地で暮らす人間としての使命感や郷土愛を感じました。
私もボランティア活動に参加しています。震災を風化させないよう、継続した活動にしていくためには、交流がキーワードになると思っています。「今できることプロジェクト」のような参加型の企画を、意図的に作っていくことが大切ではないでしょうか。メディアが震災の話題を取り上げる回数が減り、残念ながら人々の関心も低くなっているように感じます。それでも自分にできることはないかと考えている人はたくさんいるはずです。
人としてどう行動するか、どうあるべきか。ツアーに参加した経験を生かして考えを深め、今後のボランティア活動や支援につなげていきたいと思います。
足が遠のいていた沿岸部 訪れて、本当に良かった
仙台市太白区
菊地芳子さん(48)
私ができることとして、買い物を通じた支援を心掛けてきました。被災地の企業が作った商品や農水産物を優先して買うようにし、お土産にも使っています。
震災後、被災した三陸沿岸部に足を向けることを避けてきました。物見遊山や物珍しさという気持ちで訪れては、被災した方々に失礼だと考えていたためです。被災者の苦しさや厳しい生活状況を報道で知るたび、何もできない自分を心苦しく感じるばかりでした。
今回のツアーに参加して、語り部のみなさんからまだまだ厳しい現状を伺いました。ですが、そんな中でも「前を向いてやっていこう」という強い気持ちを感じることができました。現地に来ることができて本当に良かった。金華山で買い求めたご朱印帳を持って、来年も、さ来年もお参りします。そして今後も被災地が立ち直っていく様子を見守り続けたいと思います。
自宅近くに仮設住宅があります。困っている方がいて、私にできることがあれば、ボランティアなどの形でお手伝いしていきたいです。
この他に、応募があった「観光型支援」の訪問先を、ご紹介します。こちらにも、ぜひ訪ねてみましょう。
みんなが集まる場所に
●南三陸直売所 みなさん館 館長 小野勝良さん(66)
みなさん館は2012年10月、宮城県本吉郡南三陸町歌津地区にできた民間の直売所です。地元の農産物や海産物、味噌や漬物などの加工食品、お土産品などを製造販売しています。
南三陸町は津波で甚大な被害を受けました。歌津の被害も大きく、まだ多くの住民が仮設住宅での暮らしを強いられています。
復興関係の仕事や被災地ツアーなどで町を訪れる人は少なくありません。ですが、歌津は町の中心部から少し離れた場所にあります。なかなか足を延ばしてもらえないのが現状です。
それでもみなさん館には今でも毎週末、東京からボランティア団体のバスが来てくれています。飲食コーナーもあり、住民の憩いの場にもなっています。人が集い、交流して、笑顔になれる店になれたらと願っています。
今からはワカメが美味しい季節。店内でワカメしゃぶしゃぶなどのお食事を召し上がっていただけます。美味しい海の幸を食べに来てください。
南三陸直売所 みなさん館 所在地:南三陸町歌津管の浜57-1 電話:0226-36-2816
http://minasankan.com/
何度でも訪れて、見てほしい
●気仙沼復興商店街 南町紫市場 副理事長 坂本正人さん(57)
私たちの仮設商店街には、地元で被災した商店や飲食店53店舗が入居しています。歴史ある割烹料亭から土産物店、生活用品を扱う店までひと通りそろい、観光客のみなさんにも楽しんでいただける場所です。
気仙沼は、がれきの撤去がようやく終わりました。街づくりは始まったばかりで、復興が進んでいるとは言えません。震災後1、2年目までは大勢来てくれたボランティアや被災地を巡るバスツアーも次第に減り、風化を感じます。
不安や厳しさはありますが、街の魅力は失われていません。特に食材は豊か。今は牡蠣やホタテなどの貝類が美味しい時期です。特産のフカヒレも、加工場が再建され、生産が戻りつつあります。
気仙沼に足を運んでもらい、現状を知ってほしい。復興に向かう気仙沼の今後を見守ってほしい。そんな気持ちで、大勢の人に何度でも気仙沼を訪れてもらいたいと思っています。みなさんのお越しをお待ちしています。
気仙沼復興商店街 南町紫市場 所在地:気仙沼市浜見山1-1 電話:0226-25-9756
http://kesennumafs.com/
癒しの時間を楽しんで
●みやぎの明治村「歴史資料館」 館長 佐藤康さん(44)
登米市登米(とよま)には、明治時代に建てられた建物が当時の面影のまま残されています。周辺はほかにも明治をしのばせる建物が残っており、その街並みから「みやぎの明治村」と呼ばれています。
震災前は関東方面などから大勢のお客様に来ていただいていましたが、市内は震災で最大震度6強の地震に見舞われ、建物の多くが被災してしまいました。
私が館長を務める歴史資料館は教育資料館など5つの施設を総称しています。震災前の建物と変わらぬよう修復しながら営業を続け、昨年11月にすべての工事を終えました。しかし、宮城県の内陸部を訪ねる観光ツアーが減ってしまったことなどから、入込客数は震災前の6割までにしか戻っていません。
明治村は昔にタイムスリップしたような感覚に浸れる癒しの空間です。みなさんに、ほっとする時間を味わっていただきたいと思っています。宮城県北の沿岸被災地を訪れる時には、ぜひお立ち寄りください。
みやぎの明治村「歴史資料館」 所在地:登米市登米町寺池桜小路2 電話:0220-52-5566(とよま観光物産センター内)
http://www.toyoma.on.arena.ne.jp/