河北新報特集紙面2018

2019年4月7日 学びを糧に、新たな未来を。

学びを糧に、新たな未来を。

プロジェクトはこれからも
さらなる進化を目指して進んでいきます。

 今できることプロジェクト2018年度の活動は、たくさんの参加者たちと学びを積み重ねながら、より大きな成果が得ることができました。そして、一年の活動で得られた課題や反省を糧に、より奥深く発展させた新たなプログラムを企画しています。真の復興のために今、何ができるのかを読者の皆さんと一緒に考え、その思いや学びを共有しながら、より大きく輪を広げていきたいと思っております。
 19年度の活動は、河北新報紙面やホームページ、フェイスブックでお知らせいたします。リアルタイムの情報は、フェイスブックの記事でお伝えしていきますので、引き続きご覧いただけますようお願いいたします。

レポート

津波の爪痕から多くを学び伝承の意義を再確認

 東日本大震災直後から被災家屋の片付けや清掃など幅広い活動を続けている「一般社団法人 気仙沼復興協会(KRA)」。本プロジェクトでは10月27日、協会メンバーとともに復興工事が進む気仙沼市の現況視察と清掃活動を行うボランティアツアーを開催しました。
 60人の参加者を乗せた2台のバスは、気仙沼市弁天町の「ホテル一景閣」に到着。KRA代表理事の熊谷義弘さんらから、協会創立の経緯と活動内容を聞いた後、気仙沼市を襲った津波の恐ろしさについて説明を受けました。

 一行はバスに再乗し、杉ノ下地区の慰霊碑と展望台へ。防災公園となっているこの場所では、住民312人の3割にあたる93人が犠牲になった痛ましい悲劇を、名前の刻まれた石碑で知りました。途中、バスの車窓から、波路上(はじかみ)地区の「気仙沼向洋高校旧校舎」を視察。高い階層まで窓が破れ、自動車が突っ込んだままの姿が当時そのままに残り、被害の凄まじさを改めて実感しました。

港町の大切な集いの地で気仙沼の再生を願う清掃活動

 バスは、最後の目的地「一景嶋(いっけいじま)神社」に到着。ここも津波によって壊滅的な被害を受けましたが、ご神体が無傷で発見されたことで、困難の最中にあった地域住民の心に再建への熱意が生まれ、2013年3月に復活を果たしました。今では、併設された公園とともに、地域における集いの場として賑わいを取り戻しつつあります。

 参加者はそれぞれ作業用の手袋をはめ、境内の草取りやゴミ拾いに取り組みました。約1時間の作業を終えると、境内はスッキリとした印象に。活動を終えて安堵の笑顔を浮かべる協会メンバーの福岡麻子さんは、「復興途上の気仙沼を知ってもらった皆さんには、これから変わっていく姿を見守ってほしいですね」と、参加者たちの再訪に期待を寄せていました。

写真左/境内に生い茂る雑草を熱心に集める参加者たち 写真右上/参加者みんなで黙祷を捧げた杉ノ下地区の慰霊碑 
写真右下/作業の締めくくりに笑顔で記念撮影

そして今

震災遺構の保全と運営とともに教訓を未来へ託す伝承活動へ

 今回のボランティアツアーのような被災地域の清掃活動や、個人・団体による支援の受け入れマッチングなど、多彩な活動を展開してきたKRA。津波で傷んだ写真の修復やアーカイブ化を行う「写真救済部」の取り組みも推し進めており、2月9日には河北新報社で「思い出の出張閲覧会」を行いました。「地元を離れ、なかなか気仙沼に足を運べないのでこういう機会を待っていたという来場者の声を聞き、開催の意義を感じました」と福岡さん。そして、気仙沼向洋高校の旧校舎を利用して震災遺構となった「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」が3月10日にオープンしたことを受け、現在、KRAはこの施設の運営業務に携わっています。「ボランティアの受け付けは一旦お休みをいただき、伝承館を拠点にした震災の記録や教訓を多くの来館者に伝える取り組みに力を入れたいと思っています」と話してくれました。

写真左/河北新報社で開催された「思い出の出張閲覧会」 写真右/震災遺構「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」

▶一般社団法人 気仙沼復興協会(KRA)➡ http://kra-fucco.com/ 

▶気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館 ➡ http://kesennuma-memorial.jp/

レポート

完熟イチゴの魅力を求めて大災害に備える山元町へ

 特産のイチゴ栽培を復活させるなど地域の底力を発揮し、着実に復興への歩みを続ける山元町。2015年度の活動でも協力いただいた「やまもと語りべの会」の渡邉修次会長らをガイド役に、同町を巡るバスツアーを12月1日に行いました。

 最初に訪れたのは、みんな待望の「山元いちご農園」。ここでは、大きなビニールハウスの中でたわわに実ったイチゴの摘み取り体験を楽しみました。おいしく熟した味わいに思わず笑顔がこぼれる参加者たち。岩佐隆社長からは、新たなスイーツ製品の開発など6次産業分野への躍進を目指す意気込みを教えてもらいました。

 次は、震災遺構として保存が検討されている「旧中浜小学校」へ。震災当時校長を務め、現在は「やまもと語りべの会」の一員として活動している井上剛さんの案内で、崩れ落ちた外壁などが4回も襲った津波の威力を伝える校舎を見学しました。

 平常時は地域の交流拠点として利用でき、非常時は防災拠点となる山下駅前の「防災拠点・山下地域交流センター」も訪問。ここでは、やまもと語りべの会が取り組んでいる「幸せの黄色いハンカチプロジェクト」について説明を受け、参加者たちも自分用の一枚に震災の教訓を受け継ぐ決意を、もう一枚には山元町へ向けた支援メッセージをつづりました。また、岩佐勝所長のガイドでバックヤードツアーも実施。大容量の備蓄庫、4400人に3日間水を供給できる耐震性貯水槽や非常用出入り口などを見学しました。

イチゴジャムをお土産に太鼓と歌で感動のフィナーレ

 このバスツアーで最も好評を博したのが、「山元いちご農園」のイチゴを使ったジャムづくり。岩佐社長らが指導を行いながら調理にチャレンジし、瓶詰めまで行いました。それぞれ完成した瓶を手にしながら、みな満足そうな笑顔を見せてくれました。

 町役場敷地内にある「山元中央公民館」では、地元の創作和太鼓集団「風雲乱打舞(らんだむ)」が一行を出迎え、迫力満点の演奏で参加者を圧倒しました。そしてさらに、やまもと語りべ大使として継続的に活動を行っているシンガーソングライター平松愛理さんがサプライズで登場。大ヒットソング「部屋とYシャツと私」など4曲を披露しました。ラストに演奏した新曲の「ありがとう」では、参加者も手拍子とともにメーンフレーズの〝ありがとう〟を合唱。会場に温かな一体感が生まれ、拍手が鳴り止みませんでした。

写真左/屋上まで波が押し寄せた「旧中浜小学校」 写真右上/「防災拠点・山下地域交流センター」の備蓄庫 
写真右下/参加者、やまもと語りべの会、風雲乱打舞、平松さんらで記念撮影

そして今

新たな観光の拠点施設が坂元駅前にニューオープン

 イチゴの町、山元にうれしいニュースが。震災以降、仮設店舗で営業を行っていた山元町農産物直売所「夢いちごの郷」が、JR常磐線坂元駅前に本設店舗として復旧。2月9日にグランドオープンを迎え、当日、町内外から約1万4000人の買い物客が詰めかけ大盛況のスタートを切りました。館内には、特産のイチゴやリンゴはもちろん、磯浜漁港で水揚げされるホッキ貝などの海産物、採れたての地場野菜、バラエティー豊かな加工品が集まり、まさに地域の魅力がたっぷり。株式会社やまもと地域振興公社取締役支配人の馬場健保(たけやす)さんは、「町の新たなランドマークである『やまもと夢いちごの郷』は、地元の農水産物など地場産品の直売だけでなく、町の観光スポットなど情報発信基地としての機能も担います。今後はイベントの開催や品揃えの強化を行っていきますので、皆さまぜひお越しください」と、メッセージを送ってくれました。

写真右/たくさんの来館者を迎える駐車場も完備 写真左上/買い物客で大いに賑わうオープン初日の模様
写真左下/関係者と坂元小学校児童によるテープカット

▶やまもと夢いちごの郷 ➡ http://www.town.yamamoto.miyagi.jp/soshiki/33/10277.html

知識や興味の幅を広げて目指すべき将来像をイメージ

 地域の将来を担う子どもたちを応援する本プロジェクトの人気企画「こども未来応援教室」。今年度は、2月17日に仙台育英学園宮城野キャンパスで開催し、約130人の子どもたちが参加し、職業体験などを通じて将来の夢を膨らませました。

 午前の部では、プロジェクト賛同企業などによる「社会科学習」を3クラス実施。最先端の人型ロボット「Peppar(ペッパー)」のプログラミング教室や、お金と会社について学ぶワークショップ、タイヤ交換体験などを通して自動車整備士がどんな仕事か学べる授業と、どれも興味深い内容ばかりでした。

 午後は、子どもたちの関心が高い4業種のプロが講師を務め、 それぞれの仕事を体感できる「シゴトワークショップ」を実施。子どもたちは、将来の夢と思い描きながら、働く喜びの一端に触れることができました。

写真左/Pepper(ペッパー)の プログラミング教室/ソフトバンク 写真右/「お金のひみつ−会社って、株式ってなあに?−」 ワークショップ/大和証券

若者たちの前向きな姿勢に大きな期待を得られた機会に

 3月10日に仙台国際センター展示棟で開催された「仙台防災未来フォーラム2019」。本プロジェクトでは、若者たちが震災と防災について学び合う通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」と連動し、メーン会場でトークイベントを行いました。

 司会・進行は人気パーソナリティー、本間秋彦さんが務め、次世代塾の第2期受講生である河辺千尋さん・安田琉来さん・堀美祐夏さんが登壇。さらに、神戸市で阪神・淡路大震災の語り部活動を行っている中村翼さんをゲストに迎え、次世代が担う震災伝承をテーマに語り合いました。

 本間さん、中村さんがそれぞれ自らの体験に基づく講演を行った後、今回やむなく出席できなかった女優・岩田華怜さんと次世代塾受講生らで事前に東松島市野蒜地区の各地を訪ねた被災地レポートを発表。最後に、全員参加でトークセッションを行い、震災の教訓を未来へ継承するために、若き世代の担い手たちが手渡し感覚で情報を共有する大切さを確認しました。


若い世代同士で互いに共感しながらトークが展開

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