河北新報特集紙面2012

2012年11月11日 河北新報掲載

vol.6 多くの人に 伝えたい。

「今できることプロジェクト」とは、市民の皆さん、企業・団体の皆さん、河北新報社が一緒になって、これからの被災地・被災者支援のあり方を考え、具体的なアクションへとつなげていくプロジェクトです。紙面では毎回、実際に行われている支援の事例を、いくつかの支援スタイルに分けて取り上げ、支援する立場の人と支援を受ける立場の人、双方の生の声をご紹介します。
今回のテーマは、被災者の暮らしに役立つ情報が求められる中で、情報を広めたり、当事者に代わって伝えたりする「情報発信型支援」の事例です。

「情報ボランティア@仙台」で活動している
仙台市青葉区・東北学院大1年 梅村雅さん(19)

「情報発信」という名の支援 誰かの一歩につなげる

被災者支援に必要な情報を当事者に代わって伝えるという行動も、また一つの支援の在り方です。

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被災地で活動する団体などを取材し、ブログで紹介するボランティア活動をしています。記者になるという夢があり、自分の関心や得意なことも生かせると考えて今年9月に活動に加わりました。
その中で、被災した家のペットを無償で預かってきた「ドッグウッド」の取り組みを取材しました。震災以降に預かった犬や猫は450頭以上。多くは仮設住宅やアパート暮らしとなった被災世帯のペットたちです。飼い主の生活が落ち着き、自宅に帰れたり、里親に引き取られたりした子もいましたが、取材したときには120頭が預けられたままになっていました。「里親を募集してもなかなか現れない」という話を聞き、「誰かに伝えなければ」と考えたんです。わずかながらブログにも反響があり、協力してもらっている河北新報の夕刊に同じ記事を掲載することもできました。
震災当時は高校生で受験を控え、何もできずにいました。いまは活動を通じて少しでも被災者の役に立てているのかな、と感じます。がれきの撤去などのように当事者を直接助ける支援と形は異なりますが、被災地の現状を伝えることも大切なこと。情報を広く提供することで、何か支援をしたいと考えている人の行動につながれば嬉しいです。

被災世帯のペット預かり活動を続ける「ドッグウッド」オーナー
我妻真紀さん(41)=写真・右=

ドッグウッドに愛犬を預けた 仙台市宮城野区の会社員
芳賀正治さん(42)=写真・左=

一人の小さな「SOS」 広げる存在に感謝

被災者や支援活動に取り組む団体は、状況を広く伝えることの重要性を強く感じています。

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震災から1年半以上が経ちましたが、被災ペットの問題はまだまだ解決していません。わたしたちの元には現在、自宅に帰れない犬や猫が約90頭残っています。行政による被災ペットの保護サービスが終わり、風化が進んでいるせいか、引き取り手は昨年に比べて極端に減りました。
本当はみんな元の飼い主のところへ帰してあげたい。ただ、現実的には難しい世帯も多い。愛情を持って飼ってくれる、新しい飼い主や里親が必要です。
わたしたちはチラシや本、ホームページなどを通じて多くの協力を募っていますが、自分たちだけの発信では限界があります。梅村さんのようなボランティアに情報を広めてもらう意義は大きいですね。まずは現状を知ってもらうことが力になりますから。(我妻さん)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

今年3月から10月まで愛犬のニコを預かってもらいました。地震の被害で自宅を建て替えることになり、アパートに仮住まいしていたためです。ニコは大切な家族。大事に扱ってもらい、感謝しています。
わたしたちのようにペットのことで困っている被災者は少なくありません。ペット以外のことでも震災から時間が経って初めて課題に直面する方もいます。被災者や支援者の状況を多くの人に知ってほしいと思っています。(芳賀さん)

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◎ 情報ボランティア@仙台

仙台圏の大学生が中心となり、被災者の情報を取材して発信しています。河北新報社が運営する地域SNS「ふらっと」の特設サイト「情報ボランティア」で記事を閲覧できます。

◎ 「ドックウッド」 電話 022-391-3150

仙台市青葉区のペット関連サービス会社。ドッグランやカフェ、動物病院などを経営しています。震災直後から被災世帯のペットを無償で預かる支援活動に取り組んでいます。

このほかにも情報発信を通じて被災地を支援している団体やグループがあります。いくつかご紹介します。

  1. 1NPO法人ボランティアインフォ(仙台市)
    ホームページでボランティアの情報をまとめて配信。ボランティアを募集している団体と希望者をつなぐ。
  2. 2笑顔311(仙台市)
    被災地の声や情報を伝えるため、インターネットの動画配信番組を毎週一回放送している。
  3. 3被災地に行こう!
    インターネットの交流サイト「フェイスブック」で、被災地の復興状況や観光情報などを発信している。