河北新報特集紙面2012

2012年12月11日 河北新報掲載

vol.7 復興商店街 ここから再び。

「今できることプロジェクト」とは、市民の皆さん、企業・団体の皆さん、河北新報社が一緒になって、これからの被災地・被災者支援のあり方を考え、具体的なアクションへとつなげていくプロジェクトです。紙面では毎回、実際に行われている支援の事例を、いくつかの支援スタイルに分けて取り上げ、支援する立場の人と支援を受ける立場の人、双方の生の声をご紹介します。
被災各所に仮設店舗として生まれ、地域の復興のひとつのシンボル的存在として注目されている復興商店街。今回のテーマは被災地に訪れ、商品を購入することが被災地の復興につながる「商品購入型支援」です。

塩釜市の復興商店街を訪れる仙台市の司法書士 森田みささん(46)

自宅の常備食を購入 再建をさりげなく応援

被災各地に生まれた復興商店街。お店を訪ね歩いたり、品物を買うことが直接の支援になります。

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塩釜市内で被災し、仮設の「しおがま・みなと復興市場」に入居した今野海苔店のファンです。商品ののりがしっかりしていて本当に美味しい。特に味付きもみのりがお気に入りで、子どもは味噌汁にも入れて食べています。昨年、今年と事務所主催のゴルフコンペの参加賞にしたのですが、大好評で、リピーターになった方もいたほどなんですよ。
復興市場は港のすぐ隣にあり、遊覧船に乗ったり、歴史ある街並みを歩いたりといろいろな楽しみがあります。仙台からも近く、電車で行けるのでお薦めです。
震災当日は塩釜にいました。たまたま今野海苔店さんにも寄って、いつもの味付きもみのりをたくさん買い込んでいたんです。地震の後、大変な思いで仙台まで帰りました。その後は買い物もできないような状況でしたから、のりをご飯のおかずにして何日もしのぎました。
今年に入って仮設店舗に行き、ご主人の顔を見たら元気そうで安心しました。ただ、いまの店はあくまでも仮設。いろいろとご苦労があるのだろうと思います。まとめて買うようなことがあれば少しはお役に立つかな、と思いますが、支援というよりも「美味しいから買いたい」という気持ちの方が自然。お店がなくなったら本当に困るので、頑張って続けていただきたいです。もちろん、わたしもずっと買い続けます。

しおがま・みなと復興市場に入居塩釜市で今野海苔店を経営する 今野武雄さん(56)

「客に喜ばれる品物を」 商人の気概で再建誓う

復興商店街に入居している店舗は、再建へ向けて多くの課題と向き合っています。

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復興市場の近くにあった以前の店が津波の被害に遭いました。営業を再開できたのは昨年9月です。いまはだいぶ地元の海産物が戻りました。塩釜の学校給食で使う海苔や海藻も卸していて、月に1度は放射線検査をしています。いまのところは不検出なので安心していますが、今後も万全の備えをしなければいけません。
昨年は被災地への応援ムードや高速道路の無料措置があり、人出がありましたが、今年は3、4割減りました。1、2年後には仮設を出て自前の店を再建しなければいけません。ただ、いまの支援策の中では3次産業への補助は少ないのです。最悪、すべて自力でやらなければなりません。どの店も風評被害などで売り上げが低迷しています。本当に大変です。
お客さんにはいつも励まされ、応援してもらっています。ただ、いつまでも甘えている訳にはいかない。良い商品を提供し、喜ばれて初めて商売が成り立ちますし、再建の足がかりになります。日本の食文化を残すという大切な役目もありますからね。ビートルズの名曲「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(長く曲がりくねった道)」を応援歌に頑張っています。
復興市場はマグロの専門店や生け簀のある魚屋、ワカメ漁師の直営店などがあり、バラエティ豊か。大型店に負けない、新鮮な品ぞろえも自慢です。ぜひ遊びに来てください。

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◎しおがま・みなと復興市場

塩釜市の観光施設「マリンゲート塩釜」に隣接する場所に、2011年8月にオープンしました。JR本塩釜駅からは徒歩約5分。プレハブ2棟に鮮魚店や衣料品店など18店が入居しています。12月15、16両日は「大漁まつり」が開催されます。カニ汁を無料で振る舞う(先着300名、10時から)ほか、海鮮おでんやサンマ汁など温かい食べ物を販売します。

県内の被災地の復興商店街情報は、各地の観光協会にお問い合わせください。いくつかご紹介します。

  1. 1「おがつ店こ屋街(たなこやがい)」(石巻市雄勝町雄勝伊勢畑84-1)電話 0225-57-3077
    鉄骨2階の建物にスーパーや寿司店、八百屋などが入居する。隣接する旧雄勝総合支所前では、復興イベントも多く開かれる。
  2. 2気仙沼復興商店街 南町紫市場(気仙沼市浜見山1-1)電話 0226-25-9756
    震災後の4月から開催されていた「青空市」を元に開設された仮設商店街。地元の老舗料亭などをはじめ、多種多様な約50店舗が集まる。
  3. 3ふるさと復興商店街(亘理町悠里1)電話090-8250-3876(代表)
    鮮魚店や衣料品店、居酒屋などが並ぶ。町の郷土料理「はらこ飯」を食べられる飲食店もある。