2013年2月11日 河北新報掲載
「今できることプロジェクト」とは、市民の皆さん、企業・団体の皆さん、河北新報社が一緒になって、これからの被災地・被災者支援のあり方を考え、具体的なアクションへとつなげていくプロジェクトです。紙面では毎回、実際に行われている支援の事例を、いくつかの支援スタイルに分けて取り上げ、支援する立場の人と支援を受ける立場の人、双方の生の声をご紹介してきました。
「これ、よかったよ」と周囲の人に伝えたり、訪ねて声をかけたり、思いを寄せて、ふれあって、ずっと見守っていくことも、まごころのこもった、りっぱな支援のひとつです。
被災した農家を応援している名取市の非常勤講師 大友佳代子さん(54)
名取市の大友さんはイチゴ産業の復興に向けて頑張っている宮城県山元町の農業生産法人を、さまざまな形で応援しています。
2011年夏、新聞の記事で山元町の「山元いちご農園」を知りました。同町で最初にイチゴ栽培の再建を掲げた会社です。家も農地も失った被災者が借金を背負い、ゼロから事業を始める。大変な苦労が待ち受ける中、肩を落とした周囲の先頭に立って走ろうとする姿に感銘を受けました。
その後、自分にできることを続けてきました。被災地に太陽熱温水器を贈る活動をしていた団体と農園をつないだり、イチゴを買って友人や親戚に送ったり。直売所に行きながら農場にも立ち寄ります。なかなか先が見えずにうつむきがちだったスタッフが大事そうにイチゴを育て、次第に明るくなっていく様子を見ると、逆に励まされて元気になります。
わたしは健康上の理由で、体を使うボランティアはできません。買うことや食べること、「美味しいのよ」と周囲に伝えることで応援します。ボランティア活動をしていないことに罪悪感を感じる人がいますが、そんな必要はありません。
できれば被災地を訪れてほしいと思いますが、思いを寄せることも応援の一つ。それぞれができることをして、長く復興を見守っていければいいと思っています。
宮城県山元町・山元いちご農園社長 岩佐隆さん(57)
復興に向けて頑張っている人々には、応援してくれる人の存在が一番の支えになります。
山元町の沿岸部で代々農家をしてきましたが、自宅や農地、ハウスなどすべてが津波に流されました。いまも仮設住宅で暮らしています。山元町には130軒のイチゴ農家がありましたが、被災を免れたのは10軒足らず。9割がたが壊滅的な被害を受けました。
わたしも諦めかけた時がありました。生活基盤を失い、茫然としてしまった。ただ、若者がどんどん町から離れ、仮設暮らしの人が意欲を失くしていく姿を見て、危機感を募らせました。地域を再建するにはまず自分たちが行動しなければと思い、会社を興しました。
生産技術も販売も昔のやり方だけでは通じません。新しいことに挑戦しているわけですから、次々と壁にぶち当たります。大変ですが、歯を食いしばってでも自立する。今後はイチゴを使った加工品の製造販売にも力を入れます。農業は厳しい産業ですが、自然環境の保全や雇用を作って地域に人を残すことのできる可能性のある産業です。ここを全国の農業再生のモデルにすることが大きな目標です。
自分たちだけでは、アイデアや知恵は出てきません。情報発信やPRにも限りがあります。できるだけ多くの人に地域にかかわってもらい、復興までの道のりを一緒に見ていってほしいと思っています。
◎株式会社山元いちご農園 電話 0223-37-4356
被災した3軒のイチゴ農家が集まり、2011年6月に設立されました。2160平方メートルの敷地に8棟の大型ハウスを建ててイチゴを生産。町内に直売所を開設しているほか、観光農園(イチゴ狩り)や通信販売事業を手掛けています。最近ではイチゴのポリフェノールを使った石鹸や化粧品を開発し、発売しました。
さまざまな「体験」や買い物をすることで、被災者・被災地とふれあうことができます。
- のりづくり体験(宮城県七ケ浜町・星のり店) 電話 022-357-2232
のり本来のおいしさを伝えたいと、陸上でのオリジナルのりづくり体験を無料で受け付けている。日程などは問い合わせを。 - 漁業体験(気仙沼市・唐桑町観光協会) 電話0226-32-3029
ホタテやカキの養殖施設見学(1000円)をはじめ、船づり、郷土料理をつくる体験など多様なメニューがある。 - 布草履編み方体験(宮城県女川町・うみねこハウス) 電話 070-5626-7211
女川町と石巻市で、被災して仮設住宅などに住む女性らが布草履の編み方を教えてくれる。体験料は1人1000円。 - ヤフー復興デパートメント
インターネットで東北の一次産品や工芸品を購入できる。ホームページは「気仙沼」「浜通り」など地域ごとに分かれており、生産者のこだわりや復興への思いも紹介している。 - 東北ろっけんパーク(仙台市青葉区) 電話 022-395-6101
東北の復興商店街や自治体、企業の情報を発信。「復興ギャラリー」で関連グッズを販売しているほか、毎週末に各地の産品を集めた「東北いいもんパーク」を開催している。