2015年3月22日 河北新報掲載 女川町の商店と街を訪ねる観光型支援 ポスター展を見た。女川の元気を感じた。レポート
開幕初日の女川ポスター展を見学
今回の「今できることプロジェクト」は、女川町の商店と街を訪ねる観光型支援。420件を超える応募の中から選ばれた約50名が参加。メインのアクションとして、きぼうのかね商店街などを訪ねて「女川ポスター展」を見学しました。女川ポスター展とは、被災地女川町を盛り上げるため、地元商店のポスターを東北のクリエーターたちがボランティアで制作するという企画で、展示初日の訪問となりました。店頭ほかさまざまな場所に掲出し、お気に入りのポスターに投票する総選挙も行われています(5月31日まで)。
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きぼうのかね商店街ポスター展投票所前
現地でしか見られない約200点のポスターを楽しむ
「女川ポスター展」に出品されたポスター約200点は、クリエーターたちが約半年間かけて、何度も商店主と会い、じっくりアイデアを練った力作揃い。商店主の方の魅力的な個性をテーマにしたポスターが多く、お店で直接会ってみるという楽しみがあるのが、女川ポスター展の醍醐味。素敵でおもしろいポスターをきっかけにして、商店の方との出会いがあり、楽しい交流があり、「じゃ、これひとつください」と各店の売上向上にもお役に立てる。商店街を通して現れた元気な女川町の姿を実感することができました。
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ポスターに登場した店主ご本人
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好みのポスターを見つける楽しさ
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さっそく投票。抽選で素敵な商品セットがあたる
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ポスター展はコンテナ村商店街でも
女川ポスター展のほか、「今できることプロジェクト」参加者一行は、冷凍冷蔵施設「マスカー」や「いのちの石碑」、復興まちづくり情報交流館などを見学。さまざまな女川の復興の様子を体験しました。
女川水産業復興のシンボル
「サンマの水揚げがなければ、女川の復興はない」との趣旨で、水産業復興を支える施設として2012年秋に完成した女川魚市場買受人協同組合冷凍冷蔵施設「マスカー」。1階は、柱を中心とした特殊な構造で津波を受け流す仕組みになっています。参加者は冷凍庫内のマイナス30度の世界も体験しました。
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新しい女川水産業の顔
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巨大冷凍庫の中はマイナス30度
震災教訓刻む「いのちの石碑」
女川中学校の生徒たちを中心としたプロジェクトチームにより、100円募金から始めて2013年11月に石碑が完成。あの日失われた命や、大切な人を亡くした人の心に寄り添い、守ってくれることを願い、1000年後の人たちに向けて「非常時に助け合うため普段から絆を強くする」など対策が刻まれています。
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石碑は鎌倉時代から伝わる板碑にならった形にした
復興まちづくり情報交流館にて
ジオラマやパネルなど町外の人にもわかりやすい展示。「津波が来たところに家は建てない。防潮堤は作らない。高台の山をけずって住宅や施設を建て、その土を海岸の更地の盛り土に使う、という復興計画、減災計画を早い段階で決めて、一生懸命動いています」と女川町観光協会の阿部真紀子さん。
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復興計画の説明をする阿部さん
須田町長がバス車内に
たまたま、きぼうのかね商店街に立ち寄っていた須田善明女川町長が「今できることプロジェクト」バス車内で飛び入りあいさつ。「復興が動いている様子を見てもらうのなら、今の時期がいちばん。ぜひ動いている女川町の今を感じてください」と熱く語りかけ、参加者からは大きな拍手が沸いていました。
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復興のあらましを力強く説明した須田町長
女川魚市場の復活
岸壁、建物が全壊したものの、震災の年の7月には再開。今年度末の実績は、震災前を上回る見込み。「女川は養殖ギンザケが全国一の水揚げ、サンマも全国有数。質のいい魚が揚がると評判。春から定置網で入ってくる新鮮な近海物にも力を入れています」と、女川魚市場 代表取締役専務 加藤實さん。
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県内、全国からの支援で復興できた、と加藤さん(左)。参加者も熱心に聞く。
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昼食は特製「女川丼」
魚市場事務所の昼食会場で、女川ポスター展にも参加している「お魚いちば おかせい」の女川丼を堪能しました。女川にはおいしい食事処がたくさんあります。ぜひ、次回お出かけの際には、お店の方へ。帰路では、マリンパル女川、蒲鉾本舗髙政万石の里にて、お土産ショッピングを楽しみました。
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思わず笑みがこぼれるおいしさ
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女川の美味満載!
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仙台市青葉区
山野下すみれさん(21)
被災地に対してできること 風化させてはいけないと実感
学習支援のボランティアをしたことがあります。それから被災地に対して何かできないかと思うようになりました。仙台に住んでいると震災はどんどん遠いものになっていくような気がしますが、女川中の生徒たちが建てた石碑を見たとき、風化させてはいけないのだと強く感じました。駅が完成したら、また友だちなどと一緒に遊びに来たいです。
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福島県いわき市
中村誓人さん(18)
念願叶った女川丼 ポスターもお気に入りの作品に
地元の教育復興プログラムに参加して以来、女川町に興味がありました。さんまの収穫祭で来たことがあるのですが、そのときは女川丼を食べることができずずっと心残りだったので、今回食べられてとても満足でした。前日に新聞で見たポスター一覧でも女川丼の「おかせい」さんのポスターがとても気に入っていたので、実際に見ることができてよかったです。
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東京都大田区
池澤紗季さん(29)
被災地のポスター展 周りの人たちにも発信
実家が兵庫県にあるので、大阪や神戸で開催されたポスター展は見に行ったことがあります。次はどこでやるのかと調べていたときに女川ポスター展のことを知り、このバスツアー企画に参加してみようと思いました。旅行が好きなので、被災地でもポスター展を開催しているのだということを発信しつつ、友人を誘ってまた来ようと考えています。
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日立システムズ
松林建さん(48)
新しい町づくりに向け 力強く進む姿に感銘
被災地の方とのコミュニケーション、対話を大切にしたいと思っています。「今できることプロジェクト」の観光型支援は、現地の方や行政の方などと直接会話できる点に価値があると考えています。今回、現地でさまざまなお話を聞き、女川町は新しい町づくりに向けて力強く進んでいる印象を受け、得難い体験になりました。
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